賃貸住宅の中には、一定期間の家賃が無料になるフリーレントが設定されている物件もあります。フリーレント物件はどのような仕組みなのか、借りるに当たってどんな注意が必要かについて解説します。
フリーレントとは?
フリーレントとは、入居後一定期間の家賃が無料になる賃貸住宅の契約形態です。1カ月分の家賃が無料になるものをよく見かけますが、中には3カ月間や半年間無料という物件もあるようです。
借りる側にとっては引越しに伴う初期費用が抑えられるメリットがある一方、貸主にとっても早く空室を埋められるという利点があります。
なぜフリーレント物件は存在するのか
貸主としては、なかなか空室が埋まらなければ、家賃を引き下げるという選択肢もあるはずです。なぜフリーレントにする必要があるのでしょうか。
表面上の家賃額を維持し他の住人からの値下げ要求を回避
集合住宅の場合、入居者募集中の住戸の家賃を引き下げてしまうと、同じ間取りの他の住戸の家賃と不均衡が生じてしまい、他の住人から家賃引き下げを要求される可能性があります。
借地借家法の規定上、賃貸住宅の借り主は契約期間中であっても、家賃が周辺相場に比べて割高となっているような事情がある場合には、いつでも貸主に対して家賃引き下げを請求できるからです。
これに対し、フリーレントにすれば、一定期間の家賃を無料とする形で実質的に家賃を値下げすることにはなっても、表面上の家賃は変わらないため、そうした他の住人からの家賃引き下げ要求を避けることができるわけです。
不動産価値を維持するため
また、貸主にとっては、その賃貸住宅が投資目的の物件である場合には、売却時に備えてその物件の資産価値を下げたくないという思惑もあります。
どのぐらいの家賃収入が得られるかを表す表面利回りは、家賃額を元に算出されます。この表面利回りによって物件の価値が判断されるため、家賃を引き下げるよりはフリーレントにして表面上の家賃額を維持しておいた方が、売却する際に有利になるというわけです。
フリーレント物件を借りるときの注意点
借り手側にとっては、フリーレント物件に入居するにあたって注意が必要な点もあります。
中途解約時の違約金に注意
フリーレント物件の賃貸借契約では、家賃を一定期間無料にして借り主の負担を安くする代わりに、契約期間中の中途解約については高額な違約金を課す特約条項がつけられるのが一般的です。
フリーレントを付けたうえに短期間で退去されてしまっては貸主としては採算が取れないためで、携帯電話の2年縛りみたいなものです。違約金の額はフリーレント期間中の月額家賃の合計よりも高くなっていることが多いようです。
このため、借り主としては、急に転勤が決まったなどの事情で契約期間中に中途解約せざるを得なくなった場合には、一般の賃貸住宅よりもかえって負担額が大きくなってしまうことになりかねません。
そもそも家賃が割高な場合も
また、フリーレント物件は、設定されている家賃ではなかなか借り手がつかなかった物件であることが多く、そもそも家賃が割高であると市場から判断されていたことになります。
そのような物件に、借り主が契約を更新して長期間住み続けた場合、割高な家賃を長期間支払い続けることになり、かえって損をすることになってしまいます。
無料になるのは家賃のみ
一定期間の家賃が無料になるフリーレント物件であっても、共益費や管理費までは無料の対象とはならず、入居時から徴収されるので気をつけましょう。
まとめ
結局、フリーレント物件では、契約期間中に転勤などで中途解約せざるを得なくなる可能性が低い場合で、かつ契約期間が満了したら更新せずに退去するつもりで契約するのが、一番賢いやり方といえます。
また、設定されている家賃ではなかなか借り手がつかなかった割高な物件であることも多いので、一定期間の家賃無料というえさにつられず、契約期間中の家賃支払総額を計算した上で、冷静に他の物件と比較するとよいでしょう。