シェアハウスに住むという選択。意外に知らないその実態

  • LINEで送る
シェアハウスの実態について

都会に暮らす若い単身者の間でシェアハウスが人気を集めています。実際にシェアハウスへの引っ越しを選択肢にいれる方も、増えているようです。一般の賃貸住宅に比べて家賃が安いのが魅力ですが、共同生活ならではのルールやマナーもあります。本当のところはどうなのか? 今回はシェアハウスの特徴について解説します。

シェアハウスとは?

シェアハウスについては法令上の定義があるわけではありませんが、国土交通省では「プライベートなスペースを持ちつつも、他人とトイレ、シャワールーム等の空間を共用しながら住まう賃貸物件で、入居者一人ひとりが運営事業者と個室あるいはベッド単位で契約を結ぶもの」と位置づけています。

具体的には、賃借人それぞれにプライベートな個室がありつつ、リビングルームやキッチン、浴室、トイレなどの生活空間は共用になっていて、他の住人と共同生活をする賃貸住宅のことです。

ウイークリーマンションやルームシェアとの違い

  • 家具や家電付き
  • 敷金、礼金、仲介手数料なし
  • 連帯保証人が不要

多くのシェアハウスでは、家具や家電などが一通り揃っており、また仲介手数料や連帯保証人が不要となっています。これらの点ではウイークリーマンションなどの長期滞在型宿泊施設とも似ていますが、あくまでも住宅としての位置づけで、契約も借家契約となっている点が異なります。

シェアハウスは、1つの家を複数の住人が共同で借りて生活するルームシェアとも似ています。ただ、ルームシェアでは貸主と複数の借り主が1件の賃貸借契約で家を借りているのに対し、シェアハウスの場合は、それぞれの住人が個別に貸主と賃貸借契約を結んでいる点が異なります。

シェアハウスの起源は外国人向けゲストハウス

シェアハウスは元々、主に日本で働く外国人やバックパッカーが安く住める住宅として発達したもので、かつて「ゲストハウス」などと呼ばれていました。

それが、比較的安い家賃で都会に住め、住人同士のコミュニケーションも取れるということで、日本人の若い単身者などにも注目され始め、テレビ番組にもたびたび取り上げられるなどして、次第にシェアハウスがひとつのライフスタイルとして認知されるようになりました。

利用者の多くは女性。20代~30代の学生や社会人が大半

H29シェアハウス入居者・入居経験者に対するアンケート調査
出典:シェアハウスガイドブック(国土交通省 住宅局)

国土交通省 住宅局の「シェアハウスガイドブック」によると、居住者の多くは20代~30代の若い単身者や学生です。その他、外国人留学生や高齢者、障碍者、低所得者の入居を想定したシェアハウスもあります。

一般社団法人日本シェアハウス連盟の調査(2019年1月~2月)によると、日本国内には全国で約5,000棟あり、そのほとんどは東京を含む一都三県と、大阪、名古屋エリアといった大都市圏に集中しているようです。

寝室部分は1人用の個室になっているところが中心ですが、中には2名1室のタイプや、寝室部分も数人で1部屋を共用し、個室のないドミトリータイプなどもあります。

さまざまなコンセプトのシェアハウスも誕生

以前は、空き家になっていた戸建て住宅を改装してシェアハウスとして運用する例が多かったのですが、最近では最初からシェアハウス用に建物を新築する物件も増えています。

最近では、母子で住めるシングルマザー向けや、引きこもりの人だけを集めたシェアハウス、単身のお年寄りが共同生活をするシェアハウス、バイクなど共通の趣味を持つ人が集まるものなど、さまざまな特徴を備えたシェアハウスも増えており、こうしたところは「コンセプトシェアハウス」と呼ばれています。

シェアハウスは一般の賃貸住宅とどう違う?

シェアハウスと一般の賃貸住宅との最大の違いは、何と言っても他の住人と一つ屋根の下で共同生活をする点です。リビングルームやキッチン、浴室、トイレなどは共同で、他の住人と毎日接することになるため、仲良く暮らせるかどうかがシェアハウス生活の最も重要なポイントになります。

中には掃除やごみ出しを住人が当番制で行うところもあり、共同生活のルールやマナーをちゃんと守れない人がいるとトラブルの元になります。

自動更新のない短期契約が中心

そうしたこともあってか、シェアハウスの多くは、契約形態が3カ月から長くても1年程度の短期間の定期借家契約となっています。

住宅の賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約があります。普通借家契約では借り主の権利が強く、契約期間が満了しても借り主側が退去の意思を示さない限り、原則として自動更新となって住み続けることができます。

これに対し、定期借家契約では契約期間が終了しても自動的には更新されず、貸主側が再契約を拒否すれば借り主は退去しなくてはなりません。これにより、共同生活でトラブルを起こしがちな住人を早期に退去させることができる一方で、長期間住み続けたい人にとっては、再契約を拒否される恐れがあるという点で不安な面もあります。

電気・水道代などは「共益費」として徴収

多くのシェアハウスでは、電気や水道、ガスなどの料金は、「共益費」として定額になっています。それらを使う家電や設備が主として共用部にあるためです。中には、洗濯機やレンジなどがコイン式になっているところもあります。

シェアハウスの料金相場は?【東京都区部】

三井住友トラスト基礎研究所が、2018年に行った東京都区部のシェアハウス調査によると、足立区や練馬区、板橋区、葛飾区、北区では、賃料・共益費を含めて5万円台の物件が多く、世田谷区、杉並区、大田区、中野区、豊島区、新宿区では6万円台の物件が多くみられるようです。

家賃・共益費が安いのはシェアハウスの大きな魅力のひとつですが、麻布十番や原宿といったエリアでは、10万円を超えるシェアハウスが中心となるなど、エリアによっての差はあるようです。

出典:シェアハウスの立地と特性(三井住友トラスト基礎研究所)

実態のわからないシェアハウス運営事業者も

シェアハウスと一口に言っても、そのクオリティーは業者によって千差万別です。

設備が充実して住み心地の良い物件や、高い理想を掲げたコンセプトシェアハウスが存在する一方、中には消防法などの法令に違反したり、間仕切りを設けただけの劣悪な居住環境で生活保護受給者などの弱者を食い物にする悪質シェアハウスもあります。2013年には、建築基準法や借地借家法の規制をかわすため、倉庫やオフィスの名目で賃貸する「脱法ハウス」が多数存在することが報じられ、社会問題になりました。

そんな中、2015年に国土交通省はシェアハウスの動向を把握するため、運営事業者と入居者・入居経験者に対するアンケート調査を実施しましたが、運営事業者のうち調査に協力したのは全体の13.7%にすぎず、多くの業者が回答を拒んでいます。このため、シェアハウスの全体像は今なお十分に把握できていないのが実情です。

こうしたことから、シェアハウス選びに当たっては、まず良心的な運営事業者を見つけることが何より重要となってきます。シェアハウスへの引っ越しを考える場合は、事前にきちんと調べるようにしましょう。