進学や就職、転勤、結婚と、人生の中では引っ越しをするタイミングが何度か訪れますが、中には生まれてから一度もふるさとを離れたことのない方もいらっしゃるかもしれません。引っ越しの回数は職業だけでなく、世代や地域によっても異なっています。今回は、世間では何回ぐらい引っ越しをするものなのか、その理由は何なのかを探っていきましょう。
日本人の平均引っ越し回数は3.04回
生涯に何回くらい引っ越しをするかは、その人の仕事や生活スタイルによってさまざま。会社員や公務員であれば転勤はつきものですし、子供の頃に親の仕事の関係で転校を経験した方も多いでしょう。
では、日本人は平均して何回ぐらい引っ越しをしているのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所では5年ごとに人口移動調査を行っています。最新データである2016年の調査結果(2018年3月発表)から見ていきましょう。
日本人の平均引っ越し回数は3.04回。1996年の調査結果(3.12回)と比べると、20年の間で引っ越し回数が減っていることが分かります。男女別では男性が3.06回、女性は3.03回と、男性の方がわずかに多くなってはいますが、性別による差はあまりありません。
普通に考えれば、年齢を重ねるほど経験した引っ越し回数も増えていくはずです。確かにグラフを見ると、年齢5歳ごとに区切った年齢階層別で引っ越し経験数を比較すると、0〜4歳から50〜54歳までは年齢を増すほど平均引っ越し回数は増えていきます。しかし、50〜54歳の4.23回をピークに、それ以降の年代では年齢を増すごとに徐々に引っ越し回数は減っているのが興味深いところです。
このデータからは、引っ越し回数は世代によっても異なることが示されています。今の50代後半より上の世代、だいたい1960年より前に生まれた人たちは、もっと若い世代の人たちに比べると引っ越し回数が少ない傾向にあることが分かります。
同じ家に長く住む傾向が強まる
2016年の調査では、5年前の居住地と現住所が異なる5歳以上の人の割合は、22.4%となっています。これを過去の調査結果と比較すると、2011年の調査では24.7%、2006年の調査では27.7%で、10年の間に割合が徐々に下がっています。
ここから、近年は同じ家に長く住み続ける傾向が強まっていることが分かります。
一方、5年前の居住地と現住地が異なる人の割合を年齢別で見ると、最も割合が高いのは30〜34歳で、それ以降の年代では急激に下がっていきます。
ここから、30代後半以降では同じ家に長く腰を落ち着けて住み続ける人が多くなることが分かります。定年退職までの住宅ローンの年数などを考えると、この30代後半あたりがマイホームの購入時期にあたっていることも考えられます。
都道府県別の引っ越し回数No.1は北海道
同調査では都道府県別の引っ越し動向についても集計しています(ただし、調査年の2016年に発生した熊本地震の影響で、熊本県全域と大分県由布市は調査対象に含まれていません)。
都道府県別で平均引っ越し回数の多いのは、トップが北海道(4.30回)、2位が東京都(3.71回)、以下、神奈川県(3.63回)、宮崎県(3.53回)、山口県(3.37回)と続きます。
逆に引っ越し回数が少ない都道府県は、1位が福井県(1.89回)、2位が新潟県(1.92回)、以下、山形県(2.00回)、岐阜県(2.04回)、秋田県(2.08回)の順です。
平均引っ越し回数の1位が北海道というのは、ちょっと意外な結果でもあります。北海道の人は引っ越し好きなのでしょうか。北海道は、5年前の居住地が現住地と異なる人の割合も、全国平均(22.4%)を大幅に上回る28.9%で、全国1位です。
2位の東京都は、やはり進学や就職で転入してくる人が多いためでしょう。4位の宮崎県、5位の山口県は、逆に進学・就職で地元を離れて都会に転出する人が多いのかもしれません。
引っ越し理由で最も多いのは「より良い住まいを求めて」
では、人はどんな理由で引っ越しをするのでしょうか。同調査によると、過去5年間での現住地への移動理由として最も多いのは、「住宅を主とする理由(住宅事情、生活環境上の理由、通勤通学の便)」で、35.4%。より良い住まいを求めて引っ越した人が全体の3分の1以上に上ることが分かります。
親子の同居・近居の傾向も
2011年の前回調査と比べると、「職業上の理由(就職、転職、転勤、家業継承、定年退職)」は14.1%から12.7%に減る一方、逆に「親や子との同居・近居」は6.4%から7.0%へと増えています。
ここから、仕事の都合で引っ越しする人の割合が徐々に減っていることや、親子の同居や近居を志向する傾向が高まりつつあることも分かります。