単身での引越しの場合、荷物を積んだトラックに同乗させてもらえれば、交通費の節約になっていいな、なんて思いますよね。筆者も学生時代、下宿からの引越しの際はトラックの助手席に乗せてもらいました。しかし、引越会社では基本的に、トラックには同乗できない決まりになっているのです。
引越しトラックへの同乗は原則禁止
引越会社が原則として利用者を同乗させることができないのは、道路運送法に基づく旅客運送自動車事業の許可を取得していないためです。旅客を乗せて走るにはこの許可が必要で、バス会社やタクシー会社などは許可を得ています。
これに対し、引越会社を含む運送会社は、貨物自動車運送事業法に基づき、貨物を専門に輸送する「一般貨物運送自動車事業者」としての許可を得て営業しています。
また、旅客を乗せて運転するには、運転手にも第二種運転免許が必要になりますが、引越会社の運転手の場合、過去にバスやタクシーの運転経験のある人は別として、ほとんどの人は第二種免許を取得していません。
このため、主要な引越会社では、荷物を搬送するトラックへの利用者の同乗を断っています。たとえばアーク引越センターでは「お客様がトラックへ同乗することは、法律で禁止されております。大変申し訳ございませんが、ご移動は、自家用車または公共交通機関をご利用ください」、アート引越センターでは「基本的に、ご家財を積み込んだトラックにはお客さまはご乗車いただけないことになっております」と公式サイトに明記しています。
例外的に同乗が可能になるケース
この「基本的に」という文言がちょっと気になりますが、例外として同乗が可能になる場合としては、たとえば引越し先の新居がカーナビにも表示されないような分かりにくい場所にあって道案内が必要、とか、新居が米軍基地などの関係者以外立ち入り禁止の区域内にあって居住者の通行証が必要、といったケースが考えられそうです。
赤帽なら助手席に同乗できる場合も
ところが、同じ貨物事業者でありながら、軽トラックで荷物を運ぶ赤帽には、助手席に同乗できるところもあり、そのことをセールスポイントにしている事業者もあります。
赤帽は個人事業主の組合であり、そのサービス内容は組合ごとに違いますが、公式サイトではたとえば、「助手席にお一人様でしたら同乗が可能です。遠距離等は交通費がかかりませんので、引越し費用を安く押さえるコツとして気軽にご利用ください」(赤帽いずみ運送)、「お一人様のみ同乗が可能ですが、予めのご相談が必要となります」(赤帽 花まるこ運送店)などと記載しているところがあります。
名古屋の赤帽ハッピーサービスの公式サイトでは、「助手席は空いているので1人は同乗できます」「もしもの時も自動車保険に入っていますので安心して同乗下さい」としつつ、「軽トラックですので、乗用車の様にゆったりとしたスペースが御座いませんので、長距離の同乗は、かなり忍耐と覚悟が必要です」「当社の赤帽車は全て禁煙車ですので、運転手の健康面の観点から喫煙はご遠慮下さい」と注記しています。
利用者を作業スタッフ扱いで同乗OKに?
なぜ赤帽だとトラックに同乗できるのでしょうか。赤帽の引越しサービスは、運転手兼作業スタッフ1人、軽トラック1台が基本で、1人で運べないような重い家具の搬出・搬入などは利用者が手伝わなくてはならないこともあります。このため、利用者を旅客ではなく作業スタッフとしてカウントすることで、第二種運転免許や道路運送法の問題をクリアしているものと思われます。
赤帽は大学生協などで申し込みができ、よく学生の引越しに使われています。トラックの助手席に乗せてもらえて長距離の旅費もかからないとなれば、「かなり忍耐と覚悟が必要」などと言われても学生なら我慢できそうですね。
もっとも、すべての赤帽がトラックへの同乗を認めているわけではなく、中には「万一の事故などの場合の保証の問題などがありますため、同乗はご遠慮いただいております」(杉並 赤帽アーシュ急送)というところもあります。助手席への同乗を希望する場合は、可能かどうか事前に確認しておきましょう。
ペットやバイクもトラックには載せられない
引越会社のトラックには載せられないものは、ほかにもあります。ペットやバイク、高価な美術品なども載せられません(自転車は積んでもらえる場合もあります)。引越会社のトラックに積めないような荷物がある場合は、自分で新居まで運ぶか専門輸送業者に依頼することになります。
引越会社の中には専門輸送業者への取り次ぎサービスを行っているところもあるので、引越し当日になって慌てないよう、見積もりの際などに確認・相談しておきましょう。