転勤の引越し費用、会社が負担してくれるのはどこまで?

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転勤費用、会社はどこまで負担してくれる?

転勤に伴う引越しには、引越会社に支払う料金や新居の契約時の敷金・礼金をはじめ、さまざまな費用がかかり、なにかと物入りになります。会社はどこまで負担してくれるのでしょうか。

転勤の引越し費用は会社負担てホント?

転勤に伴う引越しの費用は原則として会社が負担すべきものです。これは、転勤が会社の都合による業務命令であり、従業員はそれにより引越しを余儀なくされることを考えれば当然といえます。法律上も、雇用契約において会社の業務遂行のための費用を労働者に負担させることは許されません

転勤費用の会社負担はどこまで?

ただ、具体的にどこまでの範囲を転勤に必要な費用として会社負担とするかは、各企業ごとに異なっています。多くの従業員を抱え、転勤の可能性のある企業であれば、就業規則その他の社内規定や労使協定に定められているはずですが、その内容も会社と労働組合との交渉結果などで変わってくることがあります。ここで紹介するのは、一般的な例として、会社負担となることが多い費用、自己負担となることが多い費用についてです。

会社負担となるもの

(1)引越会社に支払う引越しの基本料金

引越会社に支払う引越しの基本的な料金は、会社負担となります。ただし、会社によっては、複数の引越会社から相見積もりを取った上で結果を会社に提出して承認を得るよう義務づけていたり、法人契約を結んでいる指定の引越会社の利用しか許されない場合もあります。筆者が勤めていた会社では、転勤内示が出た時に人事部から渡される紙に「○○通運は料金が高いので使わないように」と明記されていました。

引越しの基本料金は会社持ちですが、梱包や荷解きなど、基本料金に含まれない付加サービスについては、会社が負担してくれる場合と自己負担になる場合があり、人事部の裁量によっても変わってくるようです。引越し先に自家用車を持って行く場合も、車両の陸送サービスは高いので、なるべく自分で運転して任地まで運ぶよう人事部から要請されることもあります。

(2)任地までの交通費・宿泊費

本人と家族分の引越し先までの交通費に加え、荷物の到着日などの関係で宿泊が必要になった場合には、宿泊費も会社から支給されます。

(3)新居の住宅下見のための交通費

新居を探しに行くときの往復交通費(住宅下見交通費)は、たいていの会社では支給してもらえます。また、住宅下見休暇が与えられる会社もあります。

(4)賃貸契約時の礼金・仲介手数料・入居前家賃

引越し先の新居の賃貸契約時に必要な敷金、礼金、仲介手数料などのうち、礼金や仲介手数料など退去時に返してもらえないものは、基本的に会社負担となります。また、新居の契約をした時点から実際に入居するまでの家賃についても、たいていは会社負担となります。

なお、住宅手当のある会社では、転勤から一定期間は転勤者住宅手当として、住宅手当が増額されるところもあります。また、会社によっては、賃貸住宅を会社が法人契約で借り上げる「借り上げ社宅」の扱いにしてくれる場合もあります。

(5)赴任手当などの一時金

多くの会社では、社内規定により、赴任手当などの名目での一時金や、引越し当日分の日当が支給されます。

(6)単身赴任手当

元の家に家族を残して単身赴任する場合、生活費も余分にかかってしまいますが、たいていの会社では単身赴任期間中は「単身赴任手当」「別居手当」などの名目で手当が毎月支給されます。また、会社によっては、たとえば2カ月に一度などの頻度で単身赴任休暇を取得して家族の元に返れる制度もあり、その際の往復交通費も会社に負担してもらえる場合もあります。

自己負担となることが多いもの

(1)家財の購入・処分費用

国内での転勤の場合は、引越し先に持って行けない家財を処分したり貸し倉庫に預けたりする際の費用や、引越し先で新たに購入する家具や電化製品などの費用までは、会社には負担してもらえず、自己負担となるのが一般的です。

(2)賃貸住宅契約時の敷金

賃貸住宅を契約する際に支払う費用のうち、敷金は退去時に返還されるものなので、原則自己負担となります。ただ、関西地方では伝統的に高額な敷金が設定される慣習があり、かつては月額家賃の10カ月分というところもありました。こうした関西独特の事情に沿った特例として、会社によっては従業員の負担緩和のため、敷金が高額な場合には一部を会社が負担したり、無利子で貸し付けをしたりするところもあります。

(3)引越し前の住宅の原状回復費用

引越し前に住んでいた賃貸住宅の退去に伴う、傷の修復や壁紙の張り替えなどの原状回復費用や、キーシリンダー交換などの費用は、自己負担になることが多いようです。

この場合の費用はどうなる?

【ケース1】家族から後から引っ越してくる場合

時季外れの転勤を言い渡されたときなど、共働きの配偶者の勤務の都合や子供の通学の関係で、まず本人が任地でウイークリーマンションなどに仮住まいし、春休みなど家族の都合のいい時期に後から引っ越してきて新居に入居するケースもあるでしょう。こうした場合も、会社に事情を説明して承諾を得れば、時期をずらしての引越しであっても会社が費用を負担してくれます。

【ケース2】エアコンの取り外し・設置

いま住んでいる家のエアコンを新居に持って行く場合、取り外しや新居への設置に関しては引越会社の基本料金には含まれず、有償のオプションサービスとなります。その料金については、多くの会社では会社で負担してくれるようです。

【ケース3】ピアノ、動物(犬・猫)などの搬送

通常の引越しトラックで運べないピアノなどの大型家財のほか、犬や猫、熱帯魚などのペットの輸送も、引越会社の通常のサービスには含まれず、引き受けてもらえる場合もオプションサービスとなります。引越会社に頼めない場合は専門の輸送業者に依頼して運んでもらうことになり、いずれにしても別途費用がかかります。これらの料金については、会社が負担してくれる場合もありますが、一部また全部を自己負担しなければならないケースが多いようです。

まとめ

会社負担の場合が多いもの自己負担の場合が多いもの
引越し会社に支払う基本料金家財の購入・処分費用
任地までの交通費・宿泊費賃貸契約時の敷金
新居の下見のための交通費住宅の原状回復費用
賃貸契約時の礼金・仲介手数料ピアノやペット等の運送費用
入居までの前家賃
赴任手当などの一時金
単身赴任手当
エアコンの取り外し・取り付け

以上の例はあくまで一般的なものです。転勤に伴う諸費用をどこまで会社が負担するかについて労働基準法などの法令に特段の規定はなく、各企業の福利厚生施策に任されています。転勤が決まったら、社内規定を見直したり人事部に相談するなどして詳細を確認しておきましょう。

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