引越し先での町内会や自治会の加入は必要? 不要?

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引越し先での自治会の加入は必要?

 引越し先で町内会や自治会への加入を求められた場合、どうすればいいでしょうか。最近は加入しない世帯も増えていますが、加入しないとごみ出しができなくなったり、災害時に困るのではないかという不安もあります。

町内会・自治会とは

町内会・自治会は全国に約30万

町内会や町会、自治会は、ある地域の住民がつくる地縁団体で、呼び方もさまざま。「区会」「部落会」と呼んでいるところもあります。総務省の集計によると、全国には約30万の町内会や自治会があります。住民同士の親睦団体として祭礼など地域行事を行うだけでなく、防犯や防災、清掃の活動を行ったり、市町村の委託を受けてごみ集積所を管理したり広報紙を配布したりといった、行政の一翼を担う公共的な側面も持っています。

町内会・自治会の意外な起源

その起源はさまざまですが、戦時体制下の1940年には国が戦争遂行のための末端組織として、町内会・部落会とその下部組織の隣保班(隣組)を正式に整備しました。こうした経緯から、戦後の占領下では連合国軍総司令部(GHQ)の命令によって町内会・自治会は解散させられましたが、1952年に日本が独立を回復すると、各地で再結成され、現在に至っています。

加入するしないは個人の自由で、最近は加入しない人も増えています。ただ、多くの自治体では住民の町内会加入を呼びかけており、中には条例で住民の町内会参加を規定しているところもあります。

なぜ加入しない人が増えているのか

町内会や自治会の加入率は年々低下しています。東京都が設置した「東京の自治のあり方研究会」の報告書によると、東京都内の加入率は2003年の61%から、2013年には54%に下がっています。

出典: 東京の自治のあり方研究会 最終報告( 東京の自治のあり方研究会)

加入率低下の背景には、近隣関係が昔に比べて希薄になったことや、高齢世帯や単身世帯、共働き世帯が増えて、町内会などの活動に参加しづらくなっていることなどがあります。

町内会費・自治会費の使い道についても、近年は厳しい目が向けられるようになっています。会員から集めた会費の一部を地域の寺社や共同募金へ寄付することは、たとえ総会で決議されたとしても、少数派の信教の自由や思想・信条の自由を侵害することになりかねません。神社への町内会費からの寄付は会員の信教の自由ないし信仰の自由を侵害するとした裁判例もあります。

町内会・自治会に加入しないと起こるデメリットとは?

ごみ出しのトラブル

町内会や自治会への加入を断ったために、さまざまな嫌がらせを受けたり不便を強いられたという声はよく聞かれます。典型的なのは、ごみ出しに関するトラブルです。

各地に設置されているごみ集積所については、町内会や自治会が市町村から委託を受けて管理していることが多く、町内会員が輪番制で清掃したりしています。このため、町内会・自治会に加入しない住民がごみ出しを断られるというトラブルも起きています。

自治体によっては、町内会・自治会に加入していない住民専用のごみ集積場を設置しているところもありますが、ごみを出すのに近くの集積所を使えず、わざわざ車で持って行かなくてはならないのでは、とても不便です。

災害時の救援物資

災害時に救援物資などの必要な支援が得られなくなるとの懸念もあります。たとえば、東京・八王子市役所が八王子市町会自治会連合会と共同で作成した「町会・自治会加入促進ハンドブック(改訂版)」には、「加入の呼びかけの進め方」として、「火事や地震などの自然災害、いざというときに町会・自治会に加入していることのメリットを伝えるようにしましょう」と記載されており、町内会・自治会に加入した方が災害などの際に安心である旨をうたっています。

町内会・自治会に入らないと広報紙が届かない?

このほか、町内会・自治会が市区町村の委託を受けて広報紙を配布しているため、加入しないと広報紙が配布されないといった事例もあります。

こうしたサービスは本来、市区町村の自治体が行うべきものです。任意加入団体である町内会・自治会に加入していないからといって住民が行政サービスを受けられないのは、理不尽なことではあります。それでも、町内会・自治会に加入しないと、さまざまな不利益を被る恐れがあるのが実情です。

自分の町のコミュニティーに主体的な参加を

町内会・自治会は任意加入の団体であるにもかかわらず、加入を断ると「ごみを出せなくなりますよ」「災害の時に救援物資がもらえないかもしれませんよ」と脅されるなどして、しつこく加入を求められたという話も聞きます。これを不当な同調圧力と感じる方も多いでしょう。

ただ、そうした同調圧力や非加入による不利益といった問題とは別に、自分の住む町のコミュニティーに主体的にかかわっていくのは大事なことです。

町内会・自治会の中には、選挙の際に特定候補の集票マシンとなるところもあります。一部の有力者に自分の町を牛耳られたり、町内会を私物化されたりしないためにも、主体的に参加して運営を監視し、不満があればどんどん意見を出して、改善されないようであればそのときに脱会するというのも一つの選択肢かもしれません。

地域コミュニティーで交流を深めるのは、決して悪いことではありません。とくに戸建て住宅の場合、集合住宅のような管理組合がないため、町内会・自治会が地域社会との唯一の接点となります。