高齢のため体が不自由で、介護保険の「要介護」または「要支援」の認定を受けている人が、別の市区町村に引っ越す場合、所定の手続きが必要になります。介護保険はそれぞれの市区町村ごとに運営しており、認定権者が異なるためです。
必要な手続きを引越し後14日の期限内に行えば、それまで受けていた認定が引越し先の市区町村にも原則6カ月間引き継がれます。逆に手続き期限を過ぎてしまった場合、新たに認定申請して審査を受け直さなくてはならなくなるので、早めに手続きするようにしましょう。
介護保険と「要介護」「要支援」認定 とは?
介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合うための社会保険制度として2000年4月から始まったものです。それぞれの市区町村が保険者となって運営しています。
40歳以上の人が被保険者(加入者)となって保険料を出し合うことで、保険財源の一部を担っています。被保険者は年齢によって「第1号被保険者」(65歳以上)と「第2号保険者」(40~64歳)に分けられ、「第1号被保険者」になると市区町村から介護保険被保険者証を渡されます。
介護や支援が必要な状態と認定されたときには、利用者が費用の1~3割を自己負担し、残額を保険から負担することで、ホームヘルプサービス(訪問介護)やショートステイ(短期入所)、特別養護老人ホームへの入所などの介護・支援サービスを利用できる仕組みとなっています。
保険加入者がこれらのサービスを利用するには、居住地の市区町村に申請して「介護や支援が必要な状態」と認定される必要があります。保険者である市区町村は、申請者が「要介護」または「要支援」の対象になるか、どの程度の「要介護」または「要支援」になるかを、訪問調査や審査を経て認定します。
「要介護」と認定されると、介護サービス(介護給付)が利用できます。これに比べて症状の軽い「要支援」と認定された場合は、「要介護」状態になるのを予防するためのサービス(予防給付)を利用できます。それぞれ症状の程度により、「要介護」は5段階、「要支援」は2段階の認定区分に分かれています。
引越しの介護手続き「要介護」「要支援」認定の引き継ぎ方法
「要介護」または「要支援」の認定を受けている人が、引越し先の市区町村で認定を引き継いでもらうためには、引越し前の市区町村の役所・役場で「介護保険受給資格者証明書(被保険者の転出に係る受給資格者証明書)」を受け取り、これを引越し先の市区町村に14日以内に提出する必要があります。
引越し前の手続き
引越し前の市区町村の役所・役場では、転出届を出した後、介護保険担当課の窓口に介護保険被保険者証を返却します。これと引き替えに、認定区分を記載した「介護保険受給資格者証明書(被保険者の転出に係る受給資格者証明書)」が渡されます。
引越し先での手続き
引越し先の市区町村では、転入日から14日以内に、役所・役場で転入届を出した後、介護保険担当課窓口に「介護保険受給資格者証明書(被保険者の転出に係る受給資格者証明書)」を提出し、新しい介護保険被保険者証を受け取ります。これにより、転入前の市区町村で認定された要介護状態区分などを原則6カ月引き継ぐことができます。
なお、2017年11月からは、個人番号(マイナンバー)を使った自治体間の情報連携の本格運用が始まったことに伴い、転入申請の場合は介護保険受給資格者証明書の添付を省略することもできるようになりました。これにより、受給資格者証明書を紛失した場合でも、これまで「要介護」「要支援」認定を受けていたことを窓口で申し出れば、認定区分は引き継がれます。
引越し先が特養老人ホーム、有料老人ホーム、サ高住などの場合
これまで住んでいたのとは別の区市町村の特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(対象施設のみ)、ケアハウスなどへ入所・入居し、その施設の所在地に住民登録をする場合は、「住所地特例者」として、引き続きこれまで住んでいた市区町村の被保険者となります。このため、「要介護」「要支援」認定もそのままです。
こうした施設に入所・入居する場合は、引越し前の市区町村の役所・役場に住所地特例適用届を提出する必要があります。後日、入所・入居先に介護保険被保険者証が送られてきます。
引越しにまつわる行政手続きは「デジタルファースト法」でオンライン手続きが可能に
なお、現在国会で審議中の「デジタルファースト法案」が可決・成立すれば、2019年度中にも、引越しに伴う「要介護」「要支援」認定の引き継ぎに関する手続きは、転出・転入届など役所での他の手続きと一緒にネット上でできるようになる見通しです。法案では、このオンライン手続きには、本人確認のためマイナンバーカードが必要とされています。