毎年2月後半から3月前半にかけては確定申告の期間。また3月は引っ越しシーズンでもあります。この時期に引っ越した人は、新住所と旧住所のどちらで申告すればよいのでしょうか。
引っ越しの際は「納税地異動」の届け出が必要
所得税は国に納める税金ですが、所得税の確定申告の提出先はどこの税務署でもよいというわけではなく、住所や居所、あるいは事業所所在地を管轄する税務署で納税することになっています。基本的には住所地が納税地になります。
ちなみに「住所」とはその人の生活の本拠のこと。「居所」とは相当期間継続して居住しているものの、その人の生活の本拠にはなっていない所を指します。
このため、引っ越しで納税地が変わった場合には、遅滞なく「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出」を行う必要があります。届出書は異動前の納税地の所轄税務署長宛てに持参または郵送により提出することとされています。
確定申告をする必要がある人が遠方に引っ越すような場合には、引っ越し前に届け出を行っておいたほうがよいでしょう。「納税地の異動」と紛らわしい届け出手続きで、「納税地の変更」の届け出というものもあります。こちらは住所を持っている人が住所地に代えて居所地を納税地とする場合や、事業所などの所在地を納税地にする場合、あるいは逆にこれまで事業所などの所在地を納税地にしていた人が納税地を住所地や居所地に変える場合の届け出手続きです。
つまり「納税地の変更」の届け出は、引っ越し以外で納税地を変更するときの手続きなので、間違えないように気をつけましょう。
確定申告は提出時の納税地で行う
確定申告自体は、提出する時点での納税地を管轄する税務署に提出することとされています。申告の対象となる年に納税地だった所ではありません。たとえば2020年1月にA市からB市に引っ越して、2019年分の確定申告を2020年2月に提出する場合は、提出先はB市を管轄する税務署となります。
つまり、引っ越し前であれば旧住所の所轄税務署、引っ越し後であれば新住所の所轄税務署に提出すればよいのです。引っ越したのにまだ市区町村役所・役場での転入手続きが済んでいない場合でも、引っ越し先の所轄税務署に確定申告すれば大丈夫です。
ただ、前年度にも確定申告をしていた場合には、そのときの所轄税務署から確定申告書用紙が届くことがあります。すでに引っ越し済みなのに用紙に旧住所が印刷されていた場合は、そのままではその用紙を使って申告することができません。
その場合は、国税庁の公式サイトから用紙の書式をダウンロードして印刷するか、新居の住所を管轄する税務署から新しい申告用紙をもらう方法もありますが、それよりも国税庁のサイト内にある「確定申告書等作成コーナー」からネット上で入力する方が簡単です。
e-TAXを使った方が税務署に行くより簡単
国税庁の公式サイトにある「確定申告書作成コーナー」では、画面の案内に従って金額などを入力していけば、確定申告書を作成することができます。作成した確定申告書は、そのままe-TAX(電子申告)でネットから提出することもできますし、印刷して郵送したり税務署に直接提出したりすることもできます。e-TAXによる確定申告であれば、引越し前と引越し後のどちらの税務署に行くべきかなんて気にする必要もありません。
なお、国税庁はe-TAXを使えばスマートフォンで確定申告できることをうたっていますが、実際にはスマホで多数の数字などを入力するのはかなり大変です。パソコンを使った方がはるかに楽に手続きできるでしょう。
マイナンバーカード方式とID・パスワード方式
e-TAXで確定申告を行うには、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つの方式があります。マイナンバーカード方式の場合はマイナンバーカードとパソコンに接続されたICカードリーダーライターを用意する必要があります。
これらを持っていなければ「ID・パスワード方式」となりますが、初めて使う場合は事前に利用者識別番号を取得し、そのパスワードを登録しておく必要があります。
「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」のどちらを使う場合も、マイナンバーの番号は必要になります。マイナンバーカードを持っていない人も、マイナンバー通知カードはなくさないようにしましょう。