引越し日が決まって業者に予約する際、作業時間帯を指定せず引越会社の都合に任せる「フリー便(フリータイム便)」を選ぶと、時間帯を指定する場合と比べて料金を安く抑えることができると、聞いたことありませんか? 今回は、フリー便がなぜ安いのか、その特徴と、利用に当たっての注意点を解説します。
引越しの「フリー便」と「午前便」「午後便」はどう違う?
引越会社で見積りを取る際に聞かれる時間指定。みなさんは、どうしていますか? 多くの引越会社では、引越し作業の時間帯指定が「午前便」「午後便」「フリー便(フリータイム便)」に分かれています。
引越し「午前便」
引越しの「午前便」は、その名のとおり午前中に作業を開始するもので、午前8時から、8時半からなど、作業開始時刻を指定することができます。
自分の引越しが、その日の最初の案件となるため、スタート時間が遅れることもなく、待ち時間のストレスがありません。また、引越し後も、その日のうちに荷解きをして生活を始められることから、最も人気が高く、その分料金も高くなっています。
引越し「午後便」
引越しの「午後便」は、午後の時間帯に作業を行うもので、こちらは引越会社が午前中に行うほかの引越し作業の状況や交通渋滞などにより、作業開始時刻が変動することがあります。
もちろん、事前に開始予定時間は知らされますが、時間に幅を持たせたものが多く、時間が押すことも少なくありません。
引越し「フリー便」
「午前便」「午後便」に対し、引越しの「フリー便」とは、予約時には日にちのみを指定して、作業時間帯を指定せず、引越会社の都合に合わせるものです。
引越会社側にとっては、トラックや作業員の手の空いた時間帯に作業を組み入れることができるため、午前便や午後便に比べて料金がお得になっています。割引率は業者によって違いますので、複数社を比較してみるとよいでしょう。
引越し業者によって「フリー便」の内容に違いあり?
「フリー便」とひと言で言っても、細かい内容・条件は引越会社によって違いがあります。たとえば、アート引越センターのフリー便は「午前中の作業が終了した後にお伺いします」とされており、これならフリー便のなかでは午後の早い時間帯に作業が始まりそうです。
一方、ヤマトホームコンビニエンスの「おまかせフリー割サービス」は、利用者側が日にちを指定することもできません。連続5日間の希望期間の中から引越会社側が都合にあわせて日にち・時間を設定することになっています。
また、荷物量や距離にも規定があり、15立法メートル以内に収まる家財量で、輸送距離も50キロ以内が対象。繁忙期の3月15日~4月15日は同サービスは利用できません(注意:ヤマトホームコンビニエンスは、事業改善命令を受けたため2019年6月時点でもサービス休止中。再開の目途は立っていません)。
また、サカイ引越センターの「ご一緒便コース」では、引越し先での荷物到着日が指定できず、引越会社に任せることになっています。これにより、同一方向のほかの荷物と一緒に輸送することで、料金が安くなる仕組みです。荷物が少なく、引越し日に余裕がある方には、よいかもしれません。
引越会社 | 内容 |
アート引越センター 「フリー便」 | 「午前中の作業が終わり次第」 |
ヤマトホームコンビニエンス 「おまかせフリー割サービス」 ※業務休止中 | 家財量15立法メートル以内 輸送距離50キロ以内 5日間の間で日・時間 を業者が指定 |
サカイ引越センター 「ご一緒コース」 | 引越し荷物の到着日を指定しない 少ない荷物向き |
近距離・少量荷物に限定する業者も
引越会社によっては、前述のヤマトホームコンビニエンスのように、「フリー便」が利用できる引越しを、近距離のものに限ったり、取り扱える荷物の量を制限したりしているところがあります。
基本的には、比較的荷物の少ない単身世帯や少人数世帯向けで、かつ近距離の引越しを想定したサービスといえます。
フリー便利用の注意点。作業時間帯の確定が当日になる場合も
「フリー便」でも、引越会社のスタッフが到着する前には連絡が入りますが、いつ連絡があるかは業者によって違いがあります。引越し予定日の前日または前々日までに連絡があるところもあれば、日本通運のように「時間帯が確定するのは基本当日となる」とされているところもあります。
このようにスケジュールをなかなか立てられないため、フリー便を使う場合は引越し当日にはほかの予定を入れないでおくのが良さそうです。待ち時間が長くなることも多いため、心配性の方には向かないサービスかもしれません。
マンションへの引越しはとくに注意
なお、マンションの場合は、事前に引越し日や作業時間帯を管理組合に届け出るよう規約で義務づけているところがあります。直前まで引越し日や時間帯が確定しないと届け出が出せず、最悪の場合、引越し作業に必要なオートロックの解除やエレベーターの使用、トラックの駐車場所確保などで協力が得られなくなる恐れもありますので、事前に確認するようにしましょう。
引越しが夜間になるリスクとは?
フリー便の作業時間帯は、とくに繁忙期には、午前便や午後便の作業が終わった後の夕方に組み入れられるケースが多く、時には荷物の搬入や搬出が夜までかかってしまうこともあります。
「引越しが夜になっても、片付けが早く終わらない自分だけの問題」と思うかもしれませんが、気をつけなければいけないのは、周囲への影響です。
音や防犯面でもマンションは注意が必要
夜間の引越し作業となった場合、戸建でも近所への影響は考慮すべきですが、とくに集合住宅では注意が必要です。作業時は家具など重い物を運ぶ際、隣や階下の住戸に大きな物音が響くうえ、共用部分の床や壁を傷つけないよう養生する必要もあり、引越しは日中の明るい時間帯に行うのが原則です。
玄関がオートロックになっているマンションでは、引越しの際は荷物の搬入・搬出のためにオートロックを開放することが多いため、防犯面からも夜間の作業はほかの居住者から嫌がられます。
マンションによっては、夜間は管理人が常駐していないところもあり、そうした場合、もし引越し業者のトラックの駐車場所をめぐるトラブルなどが起こっても、対処できなくなります。また、多くの住民が帰宅する時間帯に、エレベーターを荷物搬入用に占拠してしまうことになれば、ほかの住民の心証を損ね、せっかくの新居での生活が居心地の悪いものになりかねません。
ガスの開栓や荷解きは翌日以降になる可能性
また、夜間の引越しでは、業者の引越し作業はその日のうちに終わったとしても、生活をすぐに始められないケースも考えられます。電気や水道はすぐに使えますが、ガスの開栓には作業員の立ち会いが必要なことがあります。
東京ガスの場合は、立ち会い希望時間で指定できるのは夜19時までが最終(日曜は17時まで)。
土・日・祝日(年末年始等)を含め年中無休でお伺いいたします。
訪問時間帯は以下の中からお選びいただけます。・9:00~12:00
引用:ガス開始お手続きの流れ(東京ガス)
・13:00~15:00
・15:00~17:00
・17:00~19:00(月曜~土曜のみ)
※ご希望に添えない場合もございます。ご了承ください。
夜間に荷解きすると騒音で近所迷惑となる恐れがあるので、当日の荷解きは必要最小限、寝るための布団類などに限り、残りは翌朝に回したほうがいいでしょう。
早朝引越しになった場合も注意
夜間の引っ越しも気を遣いますが、フリー便では作業が早朝になることもあり得ます。その場合も、集合住宅では通勤・通学時間帯に共用部分の床を養生したりエレベーターを使ったりすると他の居住者に迷惑をかける恐れがあるため、配慮が必要です。こうした場合に限らず、引越し前に管理人や管理会社に事前連絡をしておくこくといいでしょう。
単身者の場合は、マンションで挨拶…ということもむずかしいかもしれませんが、普段からお付き合いがあるようならば、両隣・階下の住人に「ご迷惑をおかけします」とあいさつしておくのがおすすめです。気持ちよく引っ越しできるようにしたいですね。