故人や先祖の霊をまつる仏壇は神聖なものとされるだけでなく、高価でもあり、ものによっては壊れやすいので、引越しで移動させる場合には特段の配慮が必要になります。今回は仏壇をどうやって運べばいいかを解説します。
自分で仏壇を運ぶ際の注意点
小さめの仏壇であれば、マイカーやレンタカーを使って自分で運ぶことも考えられます。その場合、仏壇の中のご本尊や位牌、遺影、仏具などは配置をスマホなどで記録した上ですべて取り出し、丁寧に梱包して運びます。
仏壇は横倒しやうつぶせにしてはならないとされており、引越しの際は高さのある荷室や助手席などに立てた状態で、車内にしっかり固定して運ぶのが基本です。どうしても立てた状態では車内に収まらない場合には、あおむけにして運びます。
仏壇は持ち上げる場合に手で持てる場所が決まっており、特に金仏壇は木製の仏壇に比べて壊れやすく、扱いが難しいので、素人が持ち運ぶと破損する危険もあります。持ち運ぶ際の注意点について、購入した仏具店に事前に確認しておきましょう。
自分で運べる自信がない場合は、仏壇の輸送に対応している引越し業者か、専門輸送業者に任せるのが無難でしょう。
引越し業者に仏壇を運んでもらう際の注意点
大手の引越し業者であれば、多くは仏壇の輸送にも対応しています。複数の業者の引越し見積もりを一括して行うことのできるウェブサイトには、運ぶ荷物を指定するリストの中に「仏壇」の項目があり、対応している業者を絞り込めるので、こうしたサイトを利用して業者を選ぶと便利です。
引越し荷物に仏壇がある場合は、通常の引越し費用に1万〜2万円上乗せされるのが相場のようです。
必ず事前申告する
引越し業者に仏壇の輸送を依頼する場合、荷物の種類としては美術品と同様の扱いをされることが多く、その場合は標準引越運送約款(国土交通省が定めた引越し契約のモデル約款)に基づいて「特殊な管理を要するもの」とされ、事前申告が必要になります。また、高価な仏壇・仏具であることを伝えずに輸送を依頼して、万一輸送中に破損してしまった場合、補償対象外となってしまいます。
このため、仏壇を引越し業者に運んでもらうに当たっては、必ずその業者が仏壇の輸送に対応していることを確認した上、運ぶ荷物の中に仏壇があることやその価格などを事前に伝えておく必要があります。
なお、金仏壇の場合は唐木仏壇に比べて取り扱いが難しく、壊れやすいため、輸送料金もそれだけ高くなることが多いようです。
事前に「魂抜き」を
「魂抜き」は、仏壇を移動させたり廃棄したりする際に、故人の魂を抜いてただの箱に戻す儀式のことです。具体的には菩提寺のお坊さんを招いて読経してもらうのですが、最近は引越しに際して「魂抜き」をやらない家庭も増えているようです。
しかし、仏壇の運搬に対応している引越し業者の中には、「魂抜き」が済んでいるかどうかを気にする業者も多く、場合によっては運搬を拒否される恐れもあるため、引越し前に「魂抜き」は済ませておきましょう。
仏壇の中を空にしておく
仏壇の輸送に対応している引越し業者でも、仏壇の中に収められているご本尊や位牌、遺影、仏具などの取り出しや再配置まではやってくれないことが多いので、引越し前にこれらをすべて取り出し、仏壇を空にしておく必要があります。
取り出す前には、引越し先で元通りの配置に戻せるよう、スマートフォンなどで写真を撮っておきましょう。
ご本尊、位牌、遺影は自分で運ぼう
仏壇の中身でも最も重要な、ご本尊、位牌、遺影については、万一の事故があっても取り替えが利かないものなので、引越し業者には任せず自分で運ぶようにしましょう。
その他の仏具については、高価で壊れやすいものが多いので、丁寧に梱包して箱に詰めます。梱包に不安があるようなら、仏壇の輸送に対応している業者に梱包を依頼しましょう。その場合、やはり神聖な品物であることから他の荷物とは違って新品の梱包材や緩衝材を使って梱包するため、費用もそれだけ高くなるようです。
高価な仏壇・仏具は専門業者に依頼
あまりに高価な仏壇や仏具だと、宝石や貴金属などと同等に見なされる恐れがあり、その場合、仏壇の輸送に対応している引越し業者でも、標準引越運送約款に基づいて輸送を断られてしまう場合もあります。
こうした高価な仏壇・仏具に関しては、仏壇の輸送を専門とする業者や、購入した仏壇店に輸送を依頼するのもひとつの方法です。
仏壇輸送の専門業者に依頼すれば、他の荷物と混載されない上、業者によっては仏具の取り外しや再配置まで行ってくれるところもあります。
近距離での移動であれば、仏壇を購入した店に相談してみる手もあります。仏壇販売店は多くの仏壇を搬送してきた経験とノウハウがあるため、輸送を引き受けてもらえば最も安心です。