東京の通勤・通学ラッシュは一昔前に比べると大幅に緩和されています。それでも地方から初めて上京してくる人には殺人的なものに感じられるでしょう。電車での通勤・通学を少しでも楽にするためには、どうすればいいのでしょうか。
東京で最も混み合う路線は何線?
国土交通省が2019年7月に発表した2018年度の通勤通学時間帯の鉄道の混雑状況によると、三大都市圏のピーク時の平均混雑率は、東京圏が163%(前年度163%)、大阪圏が126%(同125%)、名古屋圏が132%(同131%)でした。
東京圏の平均混雑率は1975年には221%でしたが、その後40年以上を経て大幅に緩和されています。それでも他の都市圏に比べると、依然として混雑率が際立っています。筆者は以前、東京から大阪に転勤したときに神戸から通勤していましたが、朝のラッシュ時でも座っていける場合が多いことに驚きました。
東京では通勤時の電車は、地下鉄丸ノ内線の荻窪駅のような始発駅から乗るのでない限り、基本的には座れないものと心得ておきましょう。
電車の混雑率の目安
混雑率 | 状態 |
---|---|
100% | ・座席につく ・つり革につかまる ・ドア付近の柱につかまる のいずれかができる状態 |
150% | 広げて楽に新聞を読める状態 |
180% | 折り畳むなど無理をすれば 新聞が読める状態 |
200% | 体が触れあい、 相当圧迫感があるが、 週刊誌程度なら何とか読める状態 |
250% | 電車が揺れるたびに 体が斜めになって身動きができず、 手も動かせない状態 |
この混雑率の目安としては、100%が定員乗車(座席につくかつり革につかまるかドア付近の柱につかまることができる)の状態。
150%は、広げて楽に新聞を読める状態。
180%は、折り畳むなど無理をすれば新聞を読める状態とされています。
これが200%になると、体が触れあい、相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める状態。
250%だと、電車が揺れるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない状態となります。
180%あたりからは、相当厳しい状態が想像できますね。
2018年度に混雑率が180%を超えた路線は11あります。混雑がひどい順に挙げると以下の通りです(カッコ内は前年度)。
2018年度の路線別・混雑率(東京)
東京地下鉄東西線 | 199%(199%) |
JR横須賀線 | 197%(196%) |
JR総武緩行線 | 196%(197%) |
JR東海道線 | 191%(187%) |
日暮里舎人ライナー | 189%(187%) |
JR京浜東北線 | 185%(186%) |
JR南武線 | 184%(189%) |
JR埼京線 | 183%(185%) |
東急田園都市線 | 182%(185%) |
JR中央快速線 | 182%(184%) |
JR総武快速線 | 181%(181%) |
混雑率のワースト1は地下鉄・東西線
以上のように、地下鉄東西線が前年度に続き混雑率ワースト1となっていますが、逆に都心部を網の目のように走っている地下鉄(東京地下鉄、都営地下鉄)が他に1本も入っていないのは意外です。
JRの混雑も想定内。8路線が混雑率180%以上
混雑率180%以上の11路線のうち、8路線をJRが占めています。
都心と郊外をつなぐ私鉄で唯一ランクインしたのが東急田園都市線。都心回帰の傾向が強まって郊外電車の乗車率は緩和される流れの中で、唯一沿線人口が増えているのが田園都市線なので、輸送力増強がなかなか追いついていないことが分かります。
地下鉄は建設年代によって利便性が大きく異なる
ところで、地下鉄を通勤・通学で毎日利用する場合に気をつけておいた方がいいのは、路線によってホームから出口までの移動が大変な路線とそうでもない路線がある点です。
地表近くを走る銀座線や丸ノ内線
戦前に建設された銀座線や昭和30年代にできた丸ノ内線は、まだトンネルを掘る技術が進んでいなかった頃の路線なので、道路を掘り返す開削工法で建設され、地表に近いところを走っています。丸ノ内線などは地上を走っている区間もあります。
御茶ノ水駅付近も地上区間のひとつで、神田川のすぐ上を走っているので、大雨で川が増水すると電車が止まることも以前はよくありました。銀座線も渋谷駅付近では地下鉄のなのに高架の上を走っています。
こうした建設年が古い地下鉄は、地上へ通じる階段も短いので出入りが楽で、出入り口からホームまでにあまり時間を要しません。
ホームが地下深くにある大江戸線
一方、都営地下鉄大江戸線のように新しい地下鉄は、大深度地下を通っているので、とても階段ではホームまでたどり着けない代わり、最初からエスカレーターが設置されており、ホームと出入り口との間の通行は、時間はかかることはあっても楽です。
地下深いのにエレベーター設置がない有楽町線
問題なのは、1970年代に建設された有楽町線などのように、中途半端に古い路線です。丸ノ内線などと違って地下の深いところを通っている(そのため核シェルターではないかという都市伝説まである)にもかかわらず、ターミナル駅を除けば、改札階と出入り口、あるいはホームまでのエスカレーターが設置されている駅はあまりありません。
最近はバリアフリー化のため各駅でエレベーターの設置工事も行われていますが、エスカレーターと違って乗降人員が少ないため、ラッシュ時などはすぐには乗れません。
このため、地下鉄沿線に住む場合は、銀座線や丸ノ内線のように地表近くを走っている最も古い路線か、南北線や都営大江戸線のように大深度地下を通っていてエスカレーターが充実している新しい路線のどちらかがおすすめです。
経路の利便性は乗換駅にも注意
駅によっては別路線への乗り換えだけで10分以上
地下鉄に関してはもうひとつ、乗換駅にも注意が必要です。駅によっては、大手町駅や霞ヶ関駅など、別の路線への乗り換えに10分以上かかるような駅もあります。
飯田橋駅も、同じ東京地下鉄の路線間の乗り換えであっても、南北線・有楽町線から東西線に乗り換えるにはかなりの距離を歩かなくてはなりません。
通勤・通学の所要時間を計算する上では、この乗り換え時間がばかになりません。どの沿線に住むか決めるにあたっては、乗り換えにどのぐらい時間がかかるかも実際に自分で歩いて検証しましょう。
信号故障や人身事故も日常茶飯事
東京の鉄道では、信号故障や人身事故、線路内立ち入り(痴漢の逃走であることが多いようです)などで、ラッシュ時にもよく遅延が発生します。そうした運行トラブルで足止めされるリスクを減らすためにも、なるべく通勤・通学先まで乗り換えなしで行ける所に住まいを定めた方がよいでしょう。
歩いて帰宅できる所に住みたい
2011年の東日本大震災の際、東京では各路線が運休し、多くの帰宅困難者が出て大混乱しました。できれば通勤・通学先から無理すれば歩いて帰れる程度の距離に住んでいれば、いざというときの安心感にもつながります。
だいたい10km以内の距離であれば、電車が止まっても歩いて帰宅できないことはなさそうです。またそのぐらいの距離なら自転車通勤も選択肢に入ってきます。
どこに住もうか? 上京前に住まいを選ぶ際には、電車による通学・通勤のことも忘れずに考慮してください。