空前のペットブームを経て、現在は不況のため飼育数は横ばいではあるものの、ペットとの共生がめずらしい時代ではなくなりました。賃貸物件でも、ペットと暮らせるマンション、アパートが増えています。なかでもペット好きから注目されているのが、ペットとの入居を前提に建てられた「ペット共生賃貸」。ここでは、ペットにも飼い主にもやさしいペット共生賃貸についてまとめます。
犬好き・猫好き注目のペット共生賃貸。ペット可賃貸とどこが違う?
一般社団法人ペットフード協会の平成30年全国犬猫飼育実態調査によると、全国の推計飼育頭数は、犬が890万3000頭、猫が964万9000頭。一時期のペットブームの頃に比べれば犬の飼育頭数はやや減少しているものの、ペットとの共生はもはや当たり前の時代になっています。
「ペットと暮らしたい!」と思ったとき、まず直面するのが住まいの問題です。もしペット不可の賃貸物件に住んでいるのなら、ペットが飼えるマンションやアパートに引越しをしなければなりません。
ひと昔前は、賃貸といえばペット不可が大半で、ペットと暮らせる部屋を探すのは大変でした。しかし、現在は時代のニーズとともに「ペット可賃貸」の物件は増加傾向に。不動産経済研究所の調査では、2007年の時点で、首都圏のペット可マンションは80%を突破という記録が残っています。ペットと暮らすことを目的にした「ペット共生賃貸」も登場し、ペットとの住まいの選択肢は増えています。
では、「ペット可賃貸」と「ペット共生賃貸」は、どこが違うのでしょうか。引越し先を決めるには、まずはそれぞれの特徴をおさえておきましょう。
ペット可賃貸の特徴
ペットの飼育が許可されている賃貸マンション、アパートのこと。新築直後、築年数が浅い時期はペット不可だったものの、途中からペット可に変更する物件もあるようです。理由は「建物が古い」、「駅から遠い」などといった、物件のデメリットを補うため。居住中の住民たちにマンション規則の変更提案をして許諾を得るなどのステップが必要ですが、空室を埋めるために、ペット可という付加価値をつけている場合もありそうです。
「ペット可」だけれどペット仕様ではない!?
しかし、ペット可の賃貸物件では、ペット用の特別な設備やサービスはない物件がほとんど。ペットを飼っていない住人もいるため、騒音やにおいなどの苦情が出て、トラブルになる可能性もあるので注意が必要です。また、「大型犬不可」、「小型犬・猫2匹まで」「多頭飼い不可」など、ペットの種類やサイズ、飼育頭数に制限がある物件も多く見られます。
ペット共生賃貸の特徴
「ペット共生賃貸」とは、もともとペットと暮らすことを前提に建てられた賃貸マンション、アパートのこと。共有スペースに足洗い場やドッグランがあったり、室内は汚れや傷、においがつきにくい壁紙・床材が使われていたりと、ペットも飼い主も快適に暮らすための設備やサービスが整っています。
まわりの入居者も基本ペットを飼っているので、ペットと暮らすうえでの問題にも理解があり、ペットを介したコミュニティが築けるのも大きなメリットと言えます。
ただし、ペット可賃貸と比べると、月々の家賃や初期費用はやや高めの設定。入居の際にはペットの審査が行われることが多く、結果によっては入居を断られることも。また、物件の絶対数がまだ少なく、ペット好きから人気が高いため、地域によってはなかなか入居できないケースもあるようです。
それぞれのメリット・デメリット
ペット可賃貸 マンション・アパート
メリット |
・物件数は「ペット共生賃貸」に比べて多い ・ペット共生賃貸に比べて、都心部/駅チカの物件が多い ・入居時にペットの審査がなく、入居を断られることはほぼない |
デメリット |
・大型犬不可、多頭飼い不可の物件が多い ・ペット用の設備・サービスが整っていないことが多い ・ペットを飼っていない住人もいて、苦情が来る可能性がある |
ペット共生賃貸 マンション・アパート
メリット |
・大型犬の飼育や、多頭飼いができるなどペットの種類・サイズの制限がペット可賃貸に比べて少ない ・共用スペースにペット用の設備が整っている ・室内は、ペットの飼育に適した壁紙・床材が使われている ・猫専用住宅では、室内にキャットウォークなどがある部屋もある ・住人はペットを飼っている人が大半で、ペットとの暮らしに理解がある ・まわりの住人とペットを介したコミュニティを築きやすい |
デメリット |
・都心部の物件が少ない ・物件の絶対数が少なく、人気の物件は空室待ちになるケースがある ・入居時にペット審査があり、結果次第では入居できない場合がある |
人もペットも気持ちよく暮らせる!ペット共生賃貸の設備
では、実際にペット共生賃貸には、どんな設備・サービスがあるのでしょうか。よくある設備を見ていきましょう。
共用部分の設備
ペット乗車中表示付きエレベーター
ペットと一緒にエレベーターに乗る際に、ボタンを押すことでペットが乗車中であることを知らせることができるエレベーター。ペット共生マンションとはいえ、あらかじめペットが乗っていることを知らせることで、ペットが苦手な人へ配慮できるとともに、ペット同士のトラブル回避も可能です。
足洗い場
犬の飼い主がうれしい便利な足洗い場は、エントランスの近くに設置。散歩や外遊びの後、建物へ入る前に汚れた犬の足を洗えます。ペット共生賃貸を象徴する設備のひとつです。
汚物用ダストボックス
散歩中に持ち帰った犬の糞などの汚物を、捨てられる汚物用のダストボックス。これがあることで、汚物を部屋に持ち帰る必要がなくなるので便利です。
ドッグラン
リードをつけずに愛犬を遊ばせられるエリア。マンションやアパートの敷地内のほか、建物の屋上に設けているケースもあります。
リードフック
足洗い場やコミュニティスペースなど、あらゆる場所に設置。入居者同士が交流している間など、犬を一時的につないでおけます。
トリミングルーム
自室では抜け毛の掃除が大変な、ペットのシャンプーやブラッシングができます。
専有部分の設備
ドッグフェンス
玄関ドアや室内ドアとペアで設置。ペットの飛び出しや来客時の飛びつきなどを防ぎます。
壁クロス見切り
室内の壁クロスは、汚れたときに張り替えやすいよう、あらかじめ上下で張り分けてあります。ひっかき傷やおしっこ汚れがついても安心です。
空気清浄機・イオン発生機
においがつかないように、空気清浄機やイオン発生機があることも。気になるペットのにおいを脱臭します。
キャットウォーク
猫のために、壁や天井付近にキャットウォークが設置されていることも。部屋の広さよりも上下運動できる環境が大切な猫にはうれしい設備です。
ペット用くぐり扉
ペットのなかでも、おもに猫のために設備。室内ドアに小さなくぐり扉をつけることで、ドアが閉まっていても部屋を自由に出入りできます。
お出かけフック
玄関ドアの脇に設置。散歩の行き帰りなど、犬を一時的につないでおくのに便利です。
ペットスペース
ペットが落ち着ける場所として、専用スペースを用意。クローゼットなどの収納下を有効活用しています。
ペット向けサービス
旭化成のペット共生賃貸「ペット共生型賃貸住宅プラスわんプラスにゃん」では、 入居者に向けていろいろなサービスも提供しています。
入居者向けウェブサイト
入居が決まると、病気やしつけの無料相談ができるほか、ペットとの暮らしの情報を提供する、入居者専用ウェブサイトを利用できます。イベントやドッグランなど、ペットとのお出かけ情報もチェックできます。
ペット相談会
物件ごとに、プロのペットアドバイザーによる相談会を開催。基本的なマナーやしつけについて学べたり、ほかの入居者とのコミュニティ作りにも役立ちます。
ペットイベント
ゲームや写真撮影会など、愛犬と一緒に参加できる「わんわんイベント」、自宅でのケアや撮影術セミナーなど、猫との暮らしを彩る「にゃんカレッジ」など、入居者向けのペットイベントを多数開催しています。
参考:ペット専用設備(ペット共生物件/旭化成不動産レジデンス)
どうやって探せばいい?ペット共生賃貸の探し方
ペット共生賃貸は着実に増えているものの、ペット可賃貸に比べれば、まだまだ物件数は少ないのが現状です。引越しを検討しているなら、まずはペット共生賃貸をプランニングしている企業や、ペット共生賃貸に強い不動産検索サイトで物件を探してみましょう。ここでは、代表的なサイトをご紹介します。
賃貸・お部屋探しのヘーベルROOM/ペット共生型賃貸住宅プラスわんプラスにゃん
部屋だけではなく、ペットとの安心で快適な暮らしそのものを提供する、旭化成の「ペット共生型賃貸住宅プラスわんプラスにゃん」。ヘーベルROOMSのWEBサイトでは、エリア別に、ペット共生賃貸の空き物件を検索できます。
ペットアドパーク
ペット共生賃貸をはじめ、ペット可・ペット相談など、ペットと暮らせる不動産情報を専門に扱う検索サイトです。全国の物件を探せるほか、ペットと暮らせる物件に詳しい不動産会社の紹介も行っています。
ホームメイト/ペット専用機能(設備)付賃貸物件検索
賃貸物件の情報を提供するホームメイトのWEBサイトでも、全国のペット専用設備が充実した物件を検索できます。ペットと暮らせる賃貸物件探しのコツなど、ペットとの暮らしの情報も充実しています。
ペット共生賃貸なら、お互いに快適な暮らしが叶う
いかがでしたか?ペット共生賃貸は、文字通り、ペットと“共に暮らす”ための賃貸物件です。なにより幸せなのは、ペットも飼い主もお互いにガマンすることなく、快適に暮らせること。ペット共生賃貸には、そのためのあらゆる設備・サービスが整っています。ペットを飼うために引越しを考えている人は、ペット共生賃貸も候補に入れてみてはいかがでしょうか?