犬や猫にとって引越しによる環境の激変は大きなストレスとなります。大事なペットの健康を損なわないよう、事前に必要な対策を取っておきましょう。犬の場合は引越し先で登録住所の変更手続きも必要となります。
引越しが決まったら、かかりつけの動物病院へ
引越しが決まったら、まずかかりつけの動物病院へ行き、移動に備えてペットの健康状態をチェックしてもらいましょう。これは、業者に搬送を依頼して万一事故があった場合の原因究明のためにも必須です。
ペットの健康状態によっては、引越しに伴うストレスを緩和するため、薬を処方してもらうことも考えられます。
獣医さんには、引越し先の動物病院へのスムーズな引き継ぎのため、既往症や予防接種歴などを記載した紹介状を書いてもらいましょう。引越し先の獣医さんを紹介してもらえる場合もあります。
ペットの搬送を業者に依頼する場合、法律で定められた予防接種の有効期間を過ぎていると搬送を断られる場合もあるので、この点も確認しておきましょう。
ペットの輸送方法を検討する
具体的にどんな方法でペットを運ぶのかも、早いうちから検討しておきましょう。飛行機や、電車、バスといった公共交通機関を使う、ペット専門の輸送業者にお願いする、車で移動するなど、どの方法にどんなメリット、デメリットがあるのか確認することが大切です。
ペットと一緒の引越し当日
引越しの当日は、ふだん見慣れない引越し業者の作業員がおおぜい家の中に入ってくることで、犬や猫はストレスを感じる場面が増えます。
できるだけ静かな場所に避難させるか、場合によっては引越し作業が終わるまでペットホテルや友人などに預けておいた方がいいでしょう。家に置いておく場合は、犬や猫が驚いて逃げ出したりしないよう、必ずケージの中に入れておきましょう。もちろん、万が一の場合に備えて、迷子札をつけることも忘れずに。
引越し当日のペットのご飯
ペットが乗り物酔いをしないよう、当日はえさの量は控えめにします。公共交通機関で運ぶ場合はケージの中に入れっぱなしとなるため、水分が補給できるようケージに給水器を取り付けておくとよいでしょう。
とくに猫の場合は環境の変化によるストレスがたまりやすいため、においの染み込んだタオルやクッションなどを備えておくと、猫を落ち着かせるのに役立ちます。
転居先での犬の登録変更手続き
生後90日を超える犬には、畜犬登録と狂犬病予防接種が法律で義務づけられています。引越しで飼い主の住所や犬の所在地が変わった場合は、登録事項変更届を提出する必要があります。
他の市区町村に引っ越す場合、既に登録・注射済みの犬であれば引越し前の市区町村での手続きは不要ですが、引越し先の市区町村役所・役場(自治体によっては保健所)で登録事項変更届を提出し、これまでの鑑札を新しい鑑札と交換してもらう必要があります。交換手数料は無料です。鑑札と注射済票のデザインは、交付する各自治体ごとに異なっています。
同一市区町村内での引越しであれば、引越しから30日以内に変更手続きを行う必要があります。鑑札はそれまでのものを引き続き使えるので、交換は不要です。
猫の登録が必要な自治体も
猫の場合は、犬と違って国の法律では今のところ登録は義務化されていませんが、自治体によっては条例などで登録制を導入しているところがあります。
自然動物保護のために猫の登録などが義務付けられている自治体
たとえば、鹿児島県・奄美大島の各自治体では、野生化した猫がアマミノクロウサギなどの希少動物を襲うのを防ぐため、条例で飼い猫の登録やマイクロチップ装着などが義務づけられており、猫の首輪に鑑札を装着しなくてはなりません。これを怠ると罰金を科せられます。
・ねこを所有し、又は飼養及び管理する者は、飼い猫1匹につき500円の登録手数料が必要となります。その際に鑑札を交付いたします。なお、生後90日を経過したねこが登録の対象となります。
・飼い猫へのマイクロチップ装着が義務となっています。
・登録の内容に変更があった場合も届出が必要です。
引用: 飼い猫の登録(鹿児島県 奄美市)
同様に、長崎県対馬市ではツシマヤマネコ保護、沖縄県竹富町ではイリオモテヤマネコ保護、同県国頭村、大宜味村、東村ではヤンバルクイナ保護を目的として、条例で飼い猫の登録やマイクロチップ装着などを義務づけています。
このほか、他の自然動物保護のためではなく、猫の迷子時対応のためなどを目的に静岡県の三島市、藤枝市などでも猫の登録制度が導入されています。
犬や猫の多頭飼いで届け出が必要な場合も
また、犬や猫を多頭飼いしている飼い主については、動物愛護管理法で都道府県知事が飼い主に飼育状況を届け出させることができると規定されています。これに基づき、千葉県などいくつかの自治体では届け出を義務づけています。
多頭飼いで「猫屋敷」化しているような家では、十分な飼育ができずに猫たちの健康が確保されづらいほか、悪臭やふんで周辺住民に迷惑となるケースも多いことから、こうした届け出制度はさらに広がりそうです。
迷子防止には迷子札やマイクロチップ
引越しに伴う移動時や引越し先の家では、慣れない環境にとまどった犬や猫が逃げ出して行方不明になってしまう恐れもあります。対策として、首輪に迷子札を装着したり、体内にマイクロチップを埋め込むことが有効です。
犬や猫につけるマイクロチップって?
マイクロチップは直径2㎜、長さ8~12㎜程度の円筒形のチップで、15けたの個体識別番号が記録されており、この番号が飼い主の氏名・住所や去勢・避妊手術済みかどうかなどの情報を記録したデータベースとひも付けられています。このチップを首の後ろなどに埋め込み、専用の読み取り装置で読み取ることで、飼い主が誰でどこに住んでいるのかが分かるようになっています。
マイクロチップ注入については一部の動物愛護団体などから反対論もありますが、外れる恐れのある迷子札と違い、一度犬や猫の体内に埋め込んでしまえば、半永久的に個体識別をすることができます。実際に、マイクロチップが挿入されていたことで飼い主とペットが再会できた事例も。
2019年12月:同年11月に静岡市葵区で迷子になった猫・デビーが、12月9日に名古屋市中区で保護。名古屋市動物愛護センターに14日に届けられたのち、マイクロチップの確認によって飼い主が判明。無事に再会を果たしました。
全国各地で飼い主が見つからないまま殺処分される犬や猫が後を絶たないことから、各自治体ではマイクロチップの埋め込みを奨励しており、中には手術費を助成してくれるところもあります。
引越し後、マイクロチップの登録内容変更も忘れずに
なお、すでにマイクロチップ埋め込み済みのペットがいる場合は、引越しで住所や電話番号が変わった際には、必ず動物病院に置いてある登録内容変更届に記載して提出しましょう。これによって、万一ペットが迷子になった場合でも、再会できる可能性が高まります。あとで慌てたり後悔しないためにも、迷子対策はきちんと行っておくのがおすすめです。