いま住んでいる所から別の市区町村に引っ越すと、これまで使っていた実印の登録が抹消され、そのままでは実印として使えなくなり、引越し先で新たに印鑑登録をやり直す必要があります。今回は、引越しの際につい忘れがちな印鑑登録の手続きについて解説します。
印鑑登録、実印とは?
「印鑑登録」とは、印影(印鑑を紙に押してできた印)の画像を役所に登録することによって、その印鑑が本人のものであることを公的に証明してもらう制度のことです。印影が登録されている印鑑のことを「実印」と呼びます。
未成年でも15歳以上なら印鑑登録可能
実印は、「印鑑登録証明書」とともに、家を買うときの不動産登記や、自動車の名義変更をはじめ、重要な契約や公正証書の作成などの際に必要となります。印鑑登録は財産を守るために大切な制度なので、登録時の本人確認手続きも厳格化されるようになっています。なお、未成年者でも15歳以上であれば印鑑登録は可能です。
印鑑登録は、どこですればいいの?
個人の印鑑登録は各市区町村が取り扱っているので、自分が住んでいる市区町村の役所・役場に印鑑を登録をします。会社など法人の場合は、印鑑登録は国の出先機関である法務局などで行います。ここでは個人の印鑑登録の場合について説明します。
市区町村の役所・役場で印鑑登録が完了すると、「印鑑登録証」が発行されます。印鑑登録証は大切に保管しましょう。以後は印鑑登録証を役所・役場の窓口に提出することによって、「印鑑登録証明書」を発行してもらえるようになります。
マイナンバーカードがあればコンビニ発行も可能
マイナンバーカードを持っている人や、住民基本台帳カード(住基カード)に印鑑登録情報を記録している人なら、いちいち市役所などに出向かなくても印鑑登録証明書をコンビニエンスストアの端末で発行可能です。
印鑑登録で登録できる印鑑に決まりはあるの?
印鑑登録できる印鑑(印影)は、1人につき1個に限られます。つまり、たとえ家族同士であっても、複数の人が同じ印鑑をそれぞれ自分のものとして登録することはできないわけです。
印鑑登録を行うことのできる印鑑については、それぞれの市区町村ごとに条例によって細かい条件が定められていますが、全国でほぼ共通する条件は次のようなものです。
印鑑登録できる印鑑
- 大きさは、印影が8㎜四方の正方形よりもはみ出し、かつ25㎜四方の正方形の中に収まるもの
- 彫られている文字については、住民基本台帳または外国人登録原票に記載されている氏名、氏、名のいずれかを彫ったものや、これらに「…之印」「…之章」の文字を加えたもの。このほか、氏に名の頭文字を付けたものなども有効
- 材質については、変形しにくいもの
なお、市販の既製印(三文判)を登録することは必ずしも禁止されてはいませんが、三文判は機械によって大量生産されており、誰でも簡単に同じものを入手できるため、実印として登録するのは危険です。登録する印鑑には、手彫りによるオリジナルのものを使うようにしましょう。
別の市区町村に引っ越す際の印鑑登録手続き
では、引越しをする場合の印鑑登録の手続きをみていきましょう。基本的には、いま住んでいる住所と別の市区町村に引っ越す場合に、印鑑登録をやり直す必要があります。
印鑑登録証の返却
別の市区町村に引っ越す場合は、これまで住んでいた市区町村の役所・役場に転出届を提出する際に、印鑑登録証を返却しましょう。自治体によっては、転出時には印鑑登録証を自分で破棄してもよいとされているところもあります。
いずれにしても、転出届が受理されると印鑑登録も自動的に抹消されるので、これまで使っていた実印や印鑑登録証は使えなくなります。
引越し先での印鑑登録
次に、引越し先の市区町村の役所・役場で印鑑登録を行います。これも転入届を出す際に一緒に行うとよいでしょう。
役所・役場で、印鑑登録申請書に必要事項を記載して窓口に提出します。手続きの際には、登録する印鑑と、運転免許証などの身元確認書類が必要です。
本人以外が代理人として申請する場合には、これに加えて登録者本人の自筆・押印による委任状のほか、代理人自身の身元確認書類が必要になります。
また、多くの自治体では、セキュリティを強化するために、代理人申請の場合は即日登録はできず、郵送文書による登録者本人への照会を経て登録が完了するようになっています。
犯罪や不正を防止するため、印鑑登録手続きは厳格化される傾向にあります。本人による印鑑登録申請の場合でも即日登録できず、郵送文書による照会手続きを必要とする自治体が多くなっています。
即日登録をしていない自治体でも、引越しに伴う印鑑登録に関しては、引越し前の自治体での印鑑登録証明書を添付して申請すれば、印鑑登録証が即日交付されるところもあります。しかし、こうした引越しの場合の特例的な登録方法も廃止の流れにあります。
このように、印鑑登録については申請から登録完了までに日数がかかることも多く、引越し後すぐには実印を使えない場合がある点には注意しましょう。
同一市区町村内での引越しの場合
引越し先が同じ市区町村内であれば、役所・役場で転居届を提出すれば、印鑑登録の住所も新住所に変更されるので、印鑑登録をやり直す必要はありません。持っている印鑑登録証も引き続き使用できます。
ただ、同じ政令指定都市の中で別の行政区に引っ越す場合には、市によって手続きが不要なところと、印鑑登録に関する変更手続きが必要となるところがあります。市のホームページなどであらかじめ確認しておきましょう。
まとめ
今回は、引っ越しに伴う印鑑登録の手続きについてご紹介しました。実印は、契約書などの捺印の際等に必要になりますので、もし実印をお持ちでない方は、引っ越しを機に、引っ越し先の市区町村で、実印登録をしてもいいかもしれませんね。