新たな戸籍をつくる機会というと、結婚がすぐに思い浮かぶかもしれませんが、実は独身の人でも、20歳になれば親の戸籍から離れて自分の戸籍を作り、本籍地を移すことができます。本籍地を移すにはどうすればいいのでしょうか。その手続き方法について解説します。
引っ越しで本籍地を移す必要はない
本籍地は現住所とは関係なく、日本国内であればどこの場所であっても本籍地にできます。他人が住んでいる家であってもかまいません。極端な例を挙げると、皇居や国会議事堂を本籍地にしている人もいます。
もっとも、自分の本籍地にしたからといって、ただ戸籍に記載されるだけで、何の権利も行使できませんので、悪しからず。
なぜ好き場所を本籍地にできるのか?
行政が管理するものでありながら、なぜ本籍地は日本国内であればどこでも指定することができるのでしょうか。
本籍が記載される戸籍は、その人の日本国民としての身分関係を公に証明するためのもので、住所を証明するためのものではない からです。パスポートの発給申請をする際に戸籍の記載事項証明の提出が必要なのは、パスポートが日本国民にのみ発給されるもので、戸籍は日本国民であることの証明になるからです。
これに対し、住民票はその人の住居関係を証明するためのものなので、引っ越しで住所が変われば、住民票も変更しなくてはいけません。
同一市区町村内の引っ越しであれば住所変更手続き、他の市区町村への引っ越しなら転出・転入届を出して住民票を移動させることになります。
戸籍の場合は本籍地を管轄する市区町村役所・役場にずっと置かれ続けているので、引っ越しで住所が変わっても本籍地を変える必要はありません。
ただ、住所変更の手続きをすると、その情報は本籍のある役所に伝えられ、戸籍の附票には住所の移り変わりが記録されています。
ここまでの話を整理するとこうなります。
種類 | 目的 | 引っ越しの際 |
---|---|---|
戸籍 | 日本人の国籍に関する事項と、 親族的な身分関係を公に証明 | 手続き不要 |
住民票 | 住民の居住関係を公に証明 | 手続き必要 |
転籍と分籍とは?
戸籍に記載されている家族全員の本籍地を変えることを「転籍」、戸籍に「子」として記載されている人だけの本籍を変えることを「分籍」といいます。分籍が必要になるのは、結婚によって夫婦となった2人が新たな戸籍をつくるときです。
本籍地は日本全国どこでもかまわないので、結婚したときでも必ずしも本籍地を変える必要はありませんが、新しい戸籍をつくるにあたっては、夫婦が生活の本拠とする場所を本籍地とするのが一般的でしょう。
生活の中で戸籍謄本や戸籍抄本が必要になる場面は、パスポート申請や不動産取引など、ときどきあるので、近くの役所で手続きできた方が便利だからです。
戸籍は基本的には夫婦と未婚の子で構成されます。夫婦の一方が「筆頭者」、もう片方が「配偶者」として記載されています。
夫婦の本籍地を別々にすることは不可能
夫婦のうち筆頭者と配偶者のどちらかだけの本籍を変えることは、たとえ別居生活していたとしても、離婚しない限りできません。
一方、未婚の子であっても、20歳以上になれば、分籍して新たな戸籍をつくることができます。
本籍を移すときの手続き方法
本籍を変更するときは、新しく本籍地を置く所、またはこれまでの本籍地だった所のいずれかを管轄する市区町村役所・役場で転籍または分籍の手続きをします。
住民票の転出・転入手続きとは違って、元の本籍地と新しい本籍地の役所で2度手続きする必要はありません。
届出人は、戸籍の筆頭者および配偶者(筆頭者が15歳未満の場合は法定代理人)の2人となります。印鑑は夫婦それぞれ別々のものを押印する必要があります。
ただ、夫婦の一方が死去している場合には1人で届け出ることもできます。また、記載済みの転籍届を窓口に持参する場合は、届出人以外でもかまいません。
手続きに必要なもの
- 転籍届
- 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
- 届出人の印鑑
転籍届の用紙は全国統一仕様なので、近くの役所でもらったもので大丈夫です。
戸籍の変更の届け出をした後、新しい戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)や一部事項証明書(戸籍抄本)が発行できるようになるまでには数日程度かかります。
ただし、新しい本籍地を反映した住民票の記載事項証明書であれば、届け出後すぐに発行できます。