家庭ごみの収集は、かつては住民税の対価である行政サービスとして無料で行われていましたが、近年、有料化に踏み切る自治体が増えています。自治体が本来やるべき業務であるごみ収集の費用を、なぜ住民が負担しなくてはいけないのでしょうか? その意義や有料化された地域について解説します。
家庭ごみの有料化が増加中
ごみの収集・処理は、各市町村や一部事務組合など自治体の行政サービスとして行われています。ごみのうち、企業などから排出される事業系のごみについては、以前から大部分の自治体で有料となっていました。家庭ごみについては、かつては無料で収集する自治体が多かったのですが、最近は有料化する自治体が増えています。
指定の有料ごみ袋を採用する方法が主流
家庭ごみを有料化する具体的なやり方としては、多くの自治体では、収集可能なごみ袋を指定のものに限定し、指定ごみ袋の代金という形で収集料金を徴収する形を取っています。
これに伴い、収集方法についても、不法投棄を防ぐため、かつては各地区ごとに設置されていたダストボックスからの収集という方式に代わって、各家庭の玄関先に出されたごみ袋を戸別収集する方式が主流を占めるようになりました。
集合住宅の場合は各住戸のごみを玄関先にまとめて出すことになりますが、指定のごみ袋を使わず不法投棄されたごみは収集してもらえず、いつまでも敷地内に残されてしまいます。このため、不法投棄防止や美観の観点から、ルールからはずれたごみ出しは住民同士の相互監視や管理人によりチェックされることでしょう。
なぜ家庭ごみの収集を有料化するのか?
自治体が家庭ごみを有料化するのには、以下のような目的があります。
ごみ処理負担の公平化
まず、ごみ処理負担の公平化。それぞれの住民が出すごみの量に応じて、その費用を負担するという応益負担を導入することで、住民の間の不公平感をなくすことです。
ごみの減量
また、家庭ごみ収集を有料化することで、ごみの減量につなげたいとの思惑もあります。たとえば東京都の場合、現在、ごみの埋め立て処分に使っている「新海面処分場」での埋め立てが満杯になると、もう東京湾には埋め立て処分場を設ける余地がなく、ごみの減量が急務となっています。
もっとも、ごみ減量については、有料化を実施した当初は減量効果があっても、その後、ごみを出す人が有料ごみ袋に慣れてくるに従い、ごみの量が元に戻るリバウンドの事例も報告されています。
家庭ごみ有料化のエリアは?
家庭ごみ収集の有料化実施率は、地域によって大きな差があります。
これについては、ごみ減量資料室代表の山谷修作・東洋大名誉教授が、全国の自治体に調査を行い、詳細なとりまとめを行っています。それによると、 2019年10月時点の全国市区町村の有料化実施率は63.9%と、3分の2近い自治体が有料化を実施 しています。
ごみの有料化実施率100%の3県・鳥取、島根、佐賀
都道府県別に有料化実施率を見ると、鳥取、島根、佐賀の各県が100%。続いて高知県が97.1%、福岡県が95.0%、香川県が94.1%、熊本県が93.3%、岐阜県が90.5%、和歌山県が90.0%の順に高くなっています。
ごみの有料化実施率が高い都道府県
都道府県 | ごみの有料化 実施率 |
---|---|
鳥取県 | 100% |
島根県 | 100% |
佐賀県 | 100% |
高知県 | 97.1% |
福岡県 | 95.0% |
香川県 | 94.1% |
熊本県 | 93.3% |
岐阜県 | 90.5% |
和歌山県 | 90.0% |
一方、有料化率が低いのは、岩手県の3.0%を筆頭に、埼玉県の15.9%、神奈川県の18.2%、三重県の27.6%、宮城県の34.3%、山梨県の37.0%、愛知県の38.9%、鹿児島県の39.5%の順です。
ごみの有料化実施率が低い都道府県
都道府県 | ごみの有料化 実施率 |
---|---|
岩手県 | 3.0% |
埼玉県 | 15.9% |
神奈川県 | 18.2% |
三重県 | 27.6% |
宮城県 | 34.3% |
山梨県 | 37.0% |
愛知県 | 38.9% |
鹿児島県 | 39.5% |
東京都は全国に比べて有料化実施率は低め
全国最大の人口を抱える 東京都の有料化実施率は46.8%と、全国平均に比べてかなり低くなっています 。
多摩地区では多くの自治体が既に有料化に踏み切っていますが、23区内ではまだ有料化は導入されていません。
有料ごみ袋の価格は
山谷氏の調査によると、2019年10月現在、有料ごみ袋の大袋1枚あたりの価格帯別都市数では、最も多いのが40円台(103市)、続いて30円台(97市)、20円台(65市)、50円台(62市)の順となっています。
ごみ袋の大きさ別の価格については、2017年9月から家庭ごみを有料化した東京都国立市の例を見ると、可燃ごみ用では、小袋(5リットル相当)が10円、中袋(10リットル相当)が20円、大袋(20リットル相当)が40円、特大袋(40リットル相当)が80円と、袋に入るごみの量に比例した価格となっています。
まとめ
家庭ごみ有料化には、ごみの減量を実現したいとの狙いも込められていますが、実際には有料ごみ袋に人々がなじんでくると、排出抑制効果もだんだん失われていく傾向にあるようです。
それでも、ごみをたくさん出す人ほど処理費用を多く負担すべきだという観点から、家庭ごみを有料化する自治体は今後さらに増えていくとみられます。