地震保険は入るべき? 加入率と特徴をチェック

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地震保険について

地震の多い日本では、住宅の耐震性強化だけでなく、いざという時の損害に備えて地震保険に加入しておくことも大事です。しかし、地震保険の加入率は全世帯の3分の1にとどまっているのが現状です。今回は地震保険の仕組みや内容、限界について解説します。

地震保険はどこまで補償してくれる?

地震保険は、地震による家屋の倒壊・損傷や、地震を原因とする火災、津波などによる損害を補償するための損害保険です。

地震が原因で火災が起きた場合、火災保険の適用対象外となるため、補償を受けるには地震保険にも加入している必要があります。地震保険は火災保険に付帯する形での契約となるので、地震保険だけの加入はできません。必ず火災保険とセットで加入することになります。

政府の再保険で大震災にも対応

東日本大震災のような大震災が発生した場合、民間の保険会社だけでは保険金支払いに対応できない恐れがあります。このため、地震保険は保険会社の保険責任を政府が再保険しており、民間保険会社と政府が共同で運営する形になっています。

これにより、地震保険は関東大震災クラスの巨大地震が発生した場合でも対応できるとされています。実際、1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災の際にも、円滑に保険金が支払われています。

地震保険の限界。補償対象は限定

現金、自動車、空き巣被害などは対象外

地震保険で補償されるのは、居住の用に供する建物(住宅)と、家財(生活用動産)です。ただし、1個または1組あたりの30万円を超える貴金属、宝石、骨とう品や、現金、有価証券(小切手、株券、商品券など)、自動車などは補償対象外となります。

震災での避難に伴う空き巣などの盗難被害についても、補償対象には含まれません。

火災保険の30~50%の範囲で設定

保険金額は、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で設定できます。ただし、建物については5000万円、家財については1000万円が限度とされています。

損害の程度と保険金の支払い

2017年1月1日以降の地震保険契約の場合、損害の程度は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に区分され、これに応じて保険金の支払額も変わります。

「全損」の場合

建物についていえば、「全損」とは主要構造部(土台、柱、壁、屋根など)の損害額が時価額の50%以上、または焼失・流失部分の床面積が延床面積の70%以上の場合で、保険金額の100%(ただし時価額が限度)が支払われます。

「大半損 」の場合

「大半損」は主要構造部の損害額が時価額の40%以上50%未満、または焼失・流失部分の床面積が延床面積の50%以上70%未満の場合で、保険金額の60%が支払われます。

「小半損」 の場合

「小半損」は主要構造部の損害額が時価額の20%以上40%未満、または焼失・流失部分の床面積が延床面積の20%以上50%未満の場合で、保険金額の30%が支払われます。

「一部損」 の場合

「一部損」とは主要構造部の損害額が時価額の3%以上20%未満、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受けた場合で、保険金額の5%が支払われます。

保険料は地域や建物構造で異なる

地震保険の保険料は、法律に基づき設立された損害保険料率算出機構という団体が、各保険会社から収集した契約・支払いデータや外部データに基づき、各地域や建物構造ごとのリスクに応じた基準料率を算出。これを各保険会社がそれぞれの地震保険の保険料としています。このため、どの保険会社でも保険料は同じです。

地震による損壊のリスクは、所在地や建物の構造によって異なります。このため、保険料率は都道府県ごとに違いがあるほか、建物構造(鉄骨・コンクリート造か木造か)によっても異なります。鉄骨・コンクリート造より木造の建物の方が高くなっています。

都道府県別で保険料を比べてみると、最も高いのは、千葉、東京、神奈川、静岡の各都県で、2万5000円(鉄骨・コンクリート造で保険金額1000万円あたり、保険期間1年について。以下同じ)です。人口密集地の首都圏や、近い将来に大規模地震の発生が予想されている静岡では保険料率も高くなっているのが分かります。

逆に保険料が安いのは、岩手、秋田、山形、栃木、群馬、富山、石川、福井、長野、滋賀、鳥取、島根、岡山、広島、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の各県で、7100円です。最も高い地域に比べ3分の1以下の保険料となっています。

https://www.giroj.or.jp/databank/earthquake.html#horizontalTab1

免震・耐震性能による割引もある

地震保険の保険料の建物構造別区分は、鉄骨・コンクリート造か木造かという、主に耐火性に着目したものですが、これに加え、免震・耐震性能による割引があります。

品確法が規定する免震建築物は50%の割引

まず、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に規定された免震建築物については、保険料は50%割引となります。免震建築物とは、最近のタワーマンションなどのように、地面と建物の間にゴム製のアイソレーターやオイルダンパーなどの免震装置を挟み込むことで、地震の揺れが建物に直接伝わらないようにした建築物のことです。

新耐震の基準を満たすと10%の割引

また、1981年6月1日に施行された改正建築基準法の耐震設計基準(新耐震)を満たす建物については、10%の割引となります。同日以降に建築確認を受けた建物だけでなく、自治体などの耐震診断や耐震改修で「新耐震」の基準を満たすと認められた建物も含まれます。この「新耐震」の基準を満たしていれば、数百年に一度の地震(東京の場合、震度6強から7)で倒壊・崩壊せず、数十年に一度の地震(東京の場合、震度5程度)で損壊しないとされています。

住宅性能評価の耐震等級でも割引あり

さらに、住宅性能評価の耐震等級による割引もあります。建築基準法の「新耐震」と同水準である「耐震等級1」の場合は、やはり「新耐震」と同じ10%割引。「新耐震」の1.25倍の強度を備える「耐震等級2」の場合は30%割引。「新耐震」の1.5倍の強度を持つ「耐震等級3」では50%割引となります。

参考:地震保険の割引制度(三井住友海上)

地震保険の加入率は

地震保険の普及の度合いを示す指標となるのが、付帯率です。これは火災保険に加入している世帯のうち、どれぐらいの割合が地震保険に加入しているかを示す数値です(地震保険は、必ず火災保険とセットで加入する仕組みになっています)。

付帯率は年々徐々に上昇しており、最新の数値である2018年度(速報値)では65.2&と、火災保険の加入世帯の約3分の2が、地震保険に加入しています。

2018年度の都道府県別の付帯率を見ると、高いところは、宮城県が86.8%、高知県が86.2%、熊本県が80.0%、宮崎県が81.4%、鹿児島県が80.3%などとなっています。震災のあった宮城や熊本のほか、南九州地方で付帯率が高くなっているのが特徴です。宮城の場合、東日本大震災直後の2011年度に81.1%となり、前年度の68.7%から12.4ポイントも急上昇しています。

低い方では、長崎県が50.1%、佐賀県が55.7%、北海道が56.6%、富山県が58.6%など。東京都も59.7%と、付帯率がかなり低い部類に入ります。

一方、全世帯に対してどのぐらいの割合が地震保険を契約しているかを示す世帯加入率は、2018年度で32.2%。全世帯のうち約3分の1が地震保険に加入していることになります。世帯加入率も毎年徐々に上昇しています。

加入しない理由は

付帯率、世帯加入率とも上昇傾向にあるとはいえ、「地震大国」といわれる日本で、まだ全世帯の3分の2が地震保険に加入していないのは、心配なことではあります。非加入の理由としては、かけられる保険金額が火災保険の保険金の50%以内で、建物に関しては上限5000万円と決まっており、万一地震の被害に遭っても補償額には限界があることなどが考えられます。

また、東京など人口の多い首都圏で保険料が高くなっていることも非加入の原因になっているとみられます。特に建築基準法の「新耐震」の基準に適合していない住宅だと、割引が適用されず、相対的に保険料は高くなってしまいます。

とはいえ、数百年に一度の巨大地震でも倒壊しない「新耐震」の住宅と、ちょっとした地震でも倒壊しそうな住宅の保険料の差がわずか10%にすぎないことは、後者にとってかなりお得な料金設定といえるでしょう。「新耐震」基準を満たさない住宅に住んでいる人は地震保険に入っておくことをお勧めします。

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