マンションの消防設備点検。頻度と内容とは?

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消防設備点検について

マンションなどの集合住宅では、年に2回、消防用設備点検が行われ、居室内への立ち入りも行われます。最近は単身世帯や共働き世帯の増加で不在がちの家が多く、平日の日中の点検にはなかなか立ち会えないのも実情ですが、万一の火災に備えて点検を受けるようにしましょう。

消防用設備点検とは

消防法には、消防用設備点検報告の制度が定められています。これはビルやマンションなどの建物で、消火器やスプリンクラー設備、自動火災報知設備などの消防用設備が火災の際に正常に作動しないと人命にかかわることから、定期的に点検し、管轄する消防署へ報告する制度です。

消防用設備点検には、6カ月ごとに行う機器点検と、年1回行う総合点検があり、合計で年2回行われます。点検結果は、集合住宅の場合、3年ごとに管轄の消防署に報告するよう定められています。

点検義務を負うのは、対象となる建物の関係者です。関係者とは、所有者、管理者、占有者を指します。つまり賃貸住宅の借り主=占有者も義務を負っていることになります。実際には、分譲マンションでは管理組合、賃貸マンションではオーナーが主体となって、民間業者に委託して点検を行うのが一般的です。

消防点検は誰が行うの?

点検は消防署の職員が直接行うわけではありません。ごく小規模のビルでは建物の防火管理者が点検を行うことも認められていますが、一般的なマンションの場合、消防設備士などの資格を持つ民間業者が、管理組合などから依頼を受けて点検を行い、結果を消防署に報告することになります。

消防点検の対象・内容とは

機器点検では、設備の配置な損傷の有無を外観からチェックしたり、簡易な操作で判断できる事項を点検したりします。一方、総合点検は、設備を実際に作動させたりして異常がないか確認するものです。点検が必要な消防設備は、消火器や屋内消火栓、非常ベル、自動火災報知設備、スプリンクラー、誘導灯などです。

点検が必要な設備

  • 消火器
  • 屋内消火栓
  • 非常ベル
  • 自動火災報知設備
  • スプリンクラー
  • 誘導等

これらのうち、居室内で行われるのは、自動火災報知設備の点検が中心です。ベランダに避難用はしごなどが設置されている場合は、これも点検対象になります。消防点検の日は、洗濯物をベランダに干すと埃等で汚れてしまうため、外に干さないように気をつけましょう。

消火器については、マンションの消防設備として設置されたものが点検対象で、これは共用部の廊下などに大型の物が設置されているのが一般的です。個人的に購入した小型消火器などは対象になりません。

自動火災報知設備は、居室内の天井に感知器、管理人室などに受信機が設置されており、感知器が煙や熱を感知すると、管理人室で異常箇所が表示されると共に、館内に警報が鳴る仕組みです。

居室内の点検では、感知器に熱源の付いた装置を押し当てることにより、警報が正常に作動するかどうかをチェックします。管理員室には別の作業員が待機しており、無線機や携帯電話で連絡を取り合いながら、感知器が正常に作動するか、受信機が問題なく受信できるか、警報が正常に鳴るかどうかをチェックします。

各居室内の天井にある感知器の動作を確認します(写真:photo-ac sorara)

居室内の点検に立ち会えないとどうなる?

集合住宅の消防用設備点検の日程は、事前に管理事務所などを通じて告知されます。しかし最近は単身世帯や共働き世帯が多くなり、検査日時が平日の日中である場合は不在にしている住人も多いため、一度の定期点検で全戸の点検を完了するのはなかなか難しいようです。

中には、部屋が散らかっているために入室を嫌がったり、1人暮らしの女性の場合は見知らぬ男性に入室されることに抵抗のある人もいたりして、居留守を使われる場合もあります。

不在時に勝手に入室される心配はナシ

消防点検の日に都合がつかずに立ち会えない場合、たとえ点検のため必要であっても、管理組合や消防署は強制的に住戸に立ち入ることまではできません。不在の住戸については、日を改めて再点検が行われることが多いのですが、なるべく都合をつけて点検に協力するようにしましょう。

点検のための立ち入りを拒否すると規約違反になることも

不在時に勝手に部屋に入られることがないのならば、消防点検は毎回無視してしまおうと考えるのは問題です。安全面の部分のみでなく、規約違反になることも。

国土交通省が定めたモデル管理規約であるマンション標準管理規約には、「管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求でき、請求された者は正当な理由がなければこれを拒否してはならない」(23条)と規定されています。入居しているマンションにこのような規約条項がある場合、消防用設備点検のための居室内への立ち入りを拒否すると、規約違反となる可能性があるのです。

点検を拒んだことで火災被害が広がると賠償責任が発生する可能性も

もし失火により火災を起こしてしまい、被害が他の住戸に及んだ場合、失火者に重過失がない限りは、失火法により、民法上の不法行為責任は発生しないのが原則です。しかし、定期点検を拒んだために消防用設備の不備が放置され、これが原因で火災の被害が他の住戸に広がったような場合は、重過失が問われて損害賠償をしなければならなくなる恐れがあります。

消防用設備点検で不備が見つかったら

消防用設備点検の結果、たとえば居室内の感知器が正常に作動しなかったなど、不良箇所が見つかった場合には、改修をする必要があります。

分譲マンションであれば、点検結果は業者から管理組合にも報告されるので、管理組合と話し合って適切な措置をとってもらうようにしましょう。

点検を装った悪質商法に注意

なお、消防用設備点検を装った悪質な訪問販売も横行して問題になっています。「消防署の方から来た」などと言って家庭を訪問し、「消火器の使用期限が過ぎている」といった文言で消火器を売りつける手口です。とくに1人暮らしのお年寄りが狙われることが多いようです。

戸建て住宅の場合は消防用設備点検の制度自体が存在しませんし、集合住宅の消防用設備点検の場合も、事前に管理事務所や管理組合から日時の告知があるはずで、いきなり訪問してくることはありません。また、消防用設備点検は、資格を持つ民間業者が集合住宅のオーナーや管理組合の依頼を受けて行うもので、消防署の職員が頼んでもいないのに直接点検に来ることなど、絶対にあり得ません。

そもそも一般の家庭では、消火器の設置は消防署から推奨はされているものの、法令上の義務ではありませんし、消火器には使用期限なども定められていません。老朽化した消火器には、正常に作動しなかったり、破裂などの危険があったりするのは事実ですが、消火器の寿命は製造から10年程度とされており、1年や2年で交換しなくてはならないものではありません。

怪しいと思ったら身元確認を

怪しいと思ったら身分証明書の提示を求めるとともに、脅迫的な言動などがあれば、すぐに警察に通報しましょう。また万一被害に遭ってしまった場合も、8日以内であればクーリングオフと言って無条件で購入を取り消し、返金を求めることができるので、最寄りの消費生活センターに相談すれば、業者との間に入って解決をあっせんしてくれることがあります。

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