転勤で引っ越すなら、持ち家はどうするのが正解?

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転勤時の持ち家について

やっと念願のマイホームを手に入れた途端に転勤が決まってしまったという、ジンクスみたいなマーフィーの法則みたいな話はよく耳にします。持ち家に住んでいる人が転勤する場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

持ち家があるのに転勤。みんなはどうしてる?

持ち家のある人にとって、転勤するときに残していくマイホームをどうするかは、最も頭を悩ます問題です。東急住宅リースが2019年2月に発表したアンケート調査結果によると、転勤前の住宅が持ち家だった人の中で、転勤時に苦労した点として「住宅の対処 (住まなくなった持ち家をどうするか) 」を挙げた人は全体の51.7%と過半数を占めています。

転勤の際、持ち家についてどう対処したか

出典:ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査2019(東急住宅リース)

実際に持ち家をどのように対処したかについては、「賃貸物件として第三者に貸した」が37.1%で最も多く、次いで「空き家の状態で保有した」(27.6%)、「売却した」(22.4%)の順となっています。

賃貸物件として第三者に貸した理由

・資産として⼿離したくなかったのと、⽼後の住まいとして持っておきたかったから(⼥性・40代)

・少しでも収入を得て、転勤先の借家の家賃にするため(男性・50代)

・住んでいない家は傷むし貸したほうが合理的だと思ったから(⼥性・50代)

引用: ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査2019(東急住宅リース)

空き家の状態で自宅を保有した理由

・短期間の転勤だったから(⼥性・50代)

・戻ってくることが決まっていたから(男性・50代)

・ 定年後に再びその家に住むつもりだから(⼥性・50代)

引用: ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査2019(東急住宅リース)

自宅を売却した理由

・管理ができないから(⼥性・40代)
・新築を購入したから(男性・50代)
・戻ってくることを考えていなかったから(男性・50代)

引用: ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査2019(東急住宅リース)

賃貸物件として人に貸し出すか、売却するか、それとも空き家にするか。それぞれの場合の注意点を順に見ていきましょう。

転勤時の持ち家対策①【貸し出す】 

何年か先に転勤先から元の勤務地に戻れる見通しがあるのであれば、持ち家を賃貸物件として人に貸し出すことが第一の選択肢となるでしょう。ただ、人に貸し出すことで家賃収入が得られるというメリットがある反面、元の勤務地に戻ってきたときに借り主にスムーズに立ち退いてもらえるだろうかという不安もあります。

普通借家契約と定期借家契約

借家人の権利は借地借家法で手厚く保護されています。通常の借家契約(普通借家契約)を結んだ場合、契約更新時期を迎えても、借家人が退去の意思を示さない限り、契約は自動更新となります。

貸し主側の都合だけで更新を拒絶して明け渡しを求めることは、たとえば家を売却する必要があるなどの正当事由がない限り、原則的にはできません。こうした制約から、家の持ち主が転勤になっても、いつ戻ってくるか分からないため家を人に貸すこともできず、空き家にせざるを得ないケースが多くありました。

空き家にせざるを得ない状況解決のための特別処置法

こうした問題に対応して、住宅の有効活用の見地から2000年に「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」ができ、定期借家契約という新しい住宅賃貸借契約の形態が認められました。この定期借家契約では、あらかじめ定めた契約期間が終了したら、契約は更新されず終了します。もし契約終了後も借り主がその家に住み続けたい場合には、貸主との間で合意したときに限り再契約を結ぶことになります。

この定期借家制度では、3年未満の契約とすることも可能で、そうしたケースでは借り主にとっては短期間で退去しなければならないというデメリットがあります。その点を踏まえて、普通借家契約に比べて家賃も安く設定されることになります。ただ、定期借家であっても、比較的長期間の契約期間を定めて貸し出す場合には、それだけ家賃のレートも高めに設定できるでしょう。

転勤先から戻ってこられる見通しが立たないような場合には、持ち家をずっと貸し続ける覚悟で普通借家契約を結んで有利な家賃レートで貸し出すことも選択肢となりますが、何年か先に戻れる見通しの場合には、家賃収入は安くなりますが定期借家契約で貸し出したほうが安全でしょう。

ただ、定期借家契約は、契約書面の記載事項などの要件が厳格に定められていることや、契約期間満了に際して借り主への通知が必要なことなど、普通借家契約に比べて手続きが複雑です。そこで、転勤族向けにマイホームの定期借家契約を仲介している不動産仲介会社のリロケーションサービスを利用すれば、そうした煩雑な手続きは代行してもらえます。

また、見知らぬ他人に持ち家を貸し出すのが不安だというのであれば、友人や知人、親類などに、元の勤務地に戻ってきたときは速やかに明け渡してもらえるという約束込みで貸してもいいかもしれません。その場合も、やはり家賃は安くせざるを得ませんが、他人に貸すよりはトラブルの心配は少なくなりそうです。

転勤時の持ち家対策②【売却する】

転勤期間が長くなりそうな場合や、もう元の勤務地に戻れる見込みがなくなったような場合には、持ち家が老朽化して評価額が下がる前に思い切って売却してしまうことも考えられます。

その場合、まだ住宅ローンを完済していなければ、家と土地に抵当権が設定されているはずなので、売却代金でローンの残額を返済し、抵当権を外してもらう必要があります。持ち家の現在価値が住宅ローンの残債より低い場合には、差額分の金額を自分で調達しなくてはなりません。

売却を考える場合は、まず持ち家の価格を不動産鑑定会社などに査定してもらって、売却金額の目安をつかんだ上で計画を立てることが重要になります。

持ち家売却は転勤から3年以内に

一つ注意しなくてはならないのは、転勤でその家を退去してから長期間たった後で売却する場合です。たとえば、当初は転勤先からすぐ戻ってこれると見込んで、空き家にしたり定期借家契約で人に貸したりしたものの、その後、元の勤務地に戻れる見込みがなくなったため家を売却するようなケースなどが考えられます。

持ち家を売却して得られるお金は譲渡所得となり、所得税がかかりますが、家の持ち主が住まなくなってから3年後の年末までに売却した場合には、売却益から3000万円が特別控除される特例があります。転勤の4年後に売却するのとでは、支払う税金の額が大きく変わってくるのです。転勤で持ち家の売却を決断する場合は、節税のため、3年以内に売却するようにしましょう。

転勤時の持ち家対策③【空き家にする】

転勤期間が短期間の見通しで、持ち家を他人に貸したくないのであれば、空き家にしておくことも考えられます。

ただ、人が住まないままにしておくと、家の劣化が早くなるともいわれています。いつの間にか不審者が住み着いたり動物の楽園になっていたりしないかも心配です。

家族や友人、親類などに頼んで定期的に家の様子を見に行ければいいのですが、そうも行かない場合には、不動産仲介会社の留守宅巡回清掃サービスを利用するという方法があります。これは定期的に留守宅を訪問し、通風や通水のほか、家の内外をチェックしてくれるサービスです。

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