転勤に伴う引越しは、とにかく時間との勝負。辞令が出てから2週間で引越しなんてケースも少なくありません。引越し直前になって慌てないよう、計画を立てて内示が出たら速やかに準備を始めましょう。
引越しを伴う転勤。辞令が出るのは着任何日前?
転勤を伴う人事異動をいつまでに本人に告知すべきかについては、法令上に特段の定めはなく、内示が出るタイミングは会社によって違います。短いところでは内示から発令まで2週間程度。ある全国紙記者から聞いた話では、その新聞社では発令日の1週間前に転勤を言い渡されるのが慣例になっているそうです。
一般的には、引越しまでの猶予は1ヵ月
もっとも、そこまで猶予のない会社は少なく、引越し準備や事務引き継ぎにも配慮して、だいたい発令日の1カ月前までには内示が出るところが多いようです。
会社によってはそれよりも前に本人に非公式な「内打診」「内内示」という形で伝えられることもありますが、その場合でも、事務引き継ぎや新居探し、引越会社への見積り要請などで動けるようになるのは、人事案が確定して内示が出されてからです。
このため、転勤が決まってから引越しするまでにおおむね1カ月程度の猶予しかなく、内示が出たらスピーディーに引越しに向けた手配を進める必要があります。
スピード引越しのためにはやることチェックが必須
このように転勤に伴う引越しは1ヵ月程度しか準備の時間がないうえ、とりわけ春の転勤・入学シーズンともなると引越し会社にも発注が殺到するため、早く申し込まないと希望日に引越しできない恐れもあります。とにかく転勤が決まったら、やるべきことをリストアップし、遺漏のないよう準備しましょう。
(1)新居探し
春の引越しシーズンは賃貸物件も多く出回りますが、良い物件はすぐに埋まってしまうため、内示が出たらすぐに新居探しをするようにしましょう。新居が決まらないと引越会社との契約もできません。家族がいる人の場合は、家族を伴って赴任するか、それとも単身赴任するかを決める必要もあります。
めぼしい物件を見つけて契約すると、敷金・礼金に加え、その日から日割りで家賃が発生します。このように今の家の家賃との二重払いになる入居前家賃や、退去時に戻ってこない礼金(関西地方での敷引き)についても、転勤の内示が出た後であれば会社が負担してくれるところが多いようです。
(2)いま住んでいる家の解約・処分
賃貸住宅の場合は、通常、退去する日の1カ月以上前にその旨を告知する必要があります。
持ち家の場合は、売却するか、空き家にするか、人に貸すかということになります。再び戻ってきて住む見通しがないのであれば、売却か貸し出しかとなります。一方、何年か先に戻ってくる見通しがあるのなら、不動産仲介会社を通して期間限定で貸し出して家賃収入を得るリロケーションが選択肢となります。通常の賃貸借契約だと家主の都合で入居者に退去を求めるのは難しいため、転勤に伴う持ち家の貸し出しにはリロケーションがよく使われることになります。
(3)引越会社の手配
特に3月から4月にかけての春の引越しシーズンの転勤の場合は、内示が出たらすぐに引越会社の手配をしないと、希望通りの日程で引越しできなかったり、そもそも見積もりを受け付けてもらえなかったりして「引越し難民」となってしまう恐れがあります。転勤に伴う引越しであれば、引越会社に支払う料金は基本的に会社負担となりますが、会社から複数の引越会社に相見積りを取るよう求められることも多く、時間も手間もかかるので、なるべく早めに手配しましょう。
なお、多くの従業員を抱えていて転勤のある企業には、特定の引越会社と法人契約を結んでいるところが多くなっています。こうしたケースでは初めから引越会社が決まっているので相見積りは不要ですが、希望の日程で引越しをするためには、できるだけ早く手配する必要があります。
(4)子どもの転校の準備、あるいは単身赴任
子どもが小中学生の場合は、転校の手続きをすれば転勤先の公立学校に転校できますが、高校生だと希望の高校に転入枠があるとは限りません。幼稚園や保育園も引越し先の地域に空きがあるかどうか事前に確認しておく必要があります。
このような子どもの学校の都合のほか、夫婦共働きで配偶者がいまの仕事を続けたいと考えている場合や、親の介護などの事情がある場合には、単身赴任も検討することになります。家族とよく話し合って、どうするかを決断しましょう。単身赴任となれば、会社から単身赴任手当が出るにしても生活費がかさむことになります。
(5)家財の整理・処分
新居が決まったら、いま住んでいる家の家財のうち、どれを新居に持って行くか、どれを処分するかを決めて、早めに整理に取りかかりましょう。とくに処分する家財が大型の家具や電化製品の場合、市区町村に粗大ごみ処分の予約を入れて引き取りに来てもらう必要があり、すぐには処分できないので、余裕を持って処分計画を立てましょう。
(6)転出手続きや電気・ガス・水道などの解約手続き
市区町村の役所・役場での転出に伴う諸手続きや、電気・ガス・水道などの解約、光ファイバーやADSLなどのインターネット回線の解約手続きも早めにやっておきましょう。
(7)取引先へのあいさつ、近所へのあいさつ回り
勤務先では後任者への事務引き継ぎとともにお世話になっている取引先へのあいさつ回りや転勤のあいさつ状の送付、家の近所では日頃つきあいのあった人々へのあいさつを引越し前日までに済ませておきましょう。
既婚の場合、配偶者や子どもは後日の引越しという方法も
既婚者が家族を伴って転勤する場合は、家族の勤務先や学校の都合にも配慮する必要があります。共働きであれば配偶者が仕事をすぐに辞められるとは限りませんし、子どもがいる場合も、学期途中で引越すよりも春休みなどの時期に引越して、新学年・新学期から新しい学校に転入学した方がよいでしょう。
転勤の発令日が家族の都合と合わない場合は、本人だけが先に新居に引越すか、転勤先に近いウイークリーマンションなどに仮住まいして、後から家族を呼び寄せる方法もあります。仕事と家庭の両立を目指す最近の風潮もあって、このように時期をずらしての引越しも、会社に事情を説明すれば認められることが多いのですが、社内規定をチェックしたり人事部に相談するなどして確認しておきましょう。