引っ越すのもアリ? 通勤時間の無駄を「職住近接」で解消するという選択

この記事はこんな方にお勧め!

  • 通勤で片道一時間以上かかっている方
  • 一度都心に住んでみたいと思っている方
  • 住宅手当がある企業に転職したい方

都心部で暮らしていると、片道だけで1時間、往復で2時間を電車内で過ごしているというケースがざらにありますが、この時間を減らせれば仕事や趣味など、もっと他のことに充てられるのに…。そんなことを考えたことがあるようなら、職場の近くに引っ越し、通勤時間を減らして自分の時間を確保する「職住近接」を検討してみませんか?

この「職住近接」、読んで字のごとく「職場の近くに住居を構える」ことですが、実はこちら、国土交通省が推進している国策です。同省のウェブサイトからその説明の一部を引用します。

職住近接による子育て、家庭の団欒などの時間的なゆとりや文化、ショッピング等を重視した生活を求める街なか居住へのニーズは強く、ゆとりある生活を実現し、長時間通勤の問題や通勤混雑による外部不経済を是正するため、職と住の均衡した都市構造を形成するとともに、都心地域においては、居住を含む多様な都市機能が高度に複合した魅力ある市街地への更新を図る必要がある。


出典: 第II部 国土交通行政の動向

お役所的な言い回しですが、かいつまんで言えば「職場の近くに住めば個々人に時間的な余裕もできるし、通勤混雑などの社会問題も解決できるよね」ということです。

それは確かにその通りかもしれませんが、とはいえ職場が都心部の場合、郊外よりは家賃が高いのが実情。そこで今回の記事では、通勤時間短縮と家賃とのバランスも含めて、「職住近接」のメリット、デメリットなどを、主に東京を例として解説します。

職住近接のメリットとデメリット

東京、大阪、名古屋の三大都市圏の中でも、通勤時間の長さや通勤の大変さが問題になるのは東京です。大阪や名古屋では混雑率も東京とは雲泥の差で、通勤時間帯でも電車の座席に座れることは決して珍しくありません。

どこの都市でも中心部に近づくほど、そして駅から近いほど家賃は高くなるのが一般的ですが、そもそも首都圏では家賃相場が地方都市とは比較にならないほど高くなっています。

そんな中で、あえて高額な家賃を負担して「職住近接」を追求するメリットはあるのでしょうか。

都心に住むことによるメリット

筆者の場合は、かつては東京郊外の国立市から都心部まで片道1時間半かけて通勤していました。関西の支社から東京に戻るときに、通勤ラッシュが嫌で都心に近い文京区に居を定め、現在に至っています。都心近くに住んでみると、通勤時間の短さ以外にも、以下のような利点があることが分かってきました。

(1)通勤時のストレスと肉体的疲労の軽減

現在満員電車で通勤している方にはこのメリットが大きいかもしれませんが、首都圏における通勤時の平均混雑率は163%(国土交通省の2017年データより)で、東京メトロ東西線の一部区間ではなんと199%(定員の倍の人数が乗車)という恐ろしい数値が出ていました。最近少しはましになってきた感もありますが、超満員の電車で見知らぬ人を押し合いへし合いしていると、心身ともにくたびれてしまいます。しかもそれが毎日続くわけですので、これを回避できるだけでも「職住近接」の意味はあると言えるかもしれません。

参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo04_hh_000077.html

(2)交通リスクの少なさ

郊外では多くの鉄道が都心から放射状に延びており、住民は単一の鉄道路線に依存しているため、利用する路線が事故などで止まってしまうと、それだけで足止めされてしまいます。これに対し、都心部では複数の地下鉄などが縦横に走っているので、一つの路線がストップしても別の路線を使って目的地までたどり着けます

(3)緑の多さと静けさ

これは一口に都心部といっても地域ごとの違いはあるでしょうが、東京の都心部には、災害対策の意味もあって、宅地開発の進んだ郊外と比べても多くの公園や緑地が確保されています。また、週末は、多くの買い物客でごった返す銀座、新宿、池袋といった繁華街を除けば、都心部は郊外と比べて道路が渋滞することも少なく、むしろ閑散としています。

(4)災害時の安心感

2011年の東日本大震災の時は、鉄道が止まって自宅に帰れない「帰宅難民」が数多く発生しました。勤務先から10キロ圏内に住んでいれば、歩いて帰宅しようと思えばできない距離ではないので、いざというときの安心感があります。震災後に首都圏で計画停電が実施されたときも、東京23区のうち21区は多くの重要施設が存在していることから、停電の対象から除外されました。

(5)以外とお金が浮くケースも

都心に住むと余計にお金がかかるとつい思ってしまいますが、状況次第ではお金が浮くケースもあり得ます。例えば、職場と家がごく近い場合では、昼の休憩時に自宅に戻り、自炊で朝食を済ませることができます。やり方次第では食費を十分に圧縮することができます。

もう1つ、飲み会などが多い方には、終電後のタクシーが安くなるという嬉しいメリットも。全員に当てはまるわけではありませんが、「職住近接」でむしろ出費を浮かせる方法がないか、検討してみるのもよさそうです。

都心に住むことのデメリット

一方で、都心に住むことには、以下のようなデメリットもあります。

(1)家賃・不動産価格の高さ

第一は何といっても家賃や不動産購入価格の高さです。ただ、都心部の各自治体では子育て世帯の定住促進のため、住宅補助を実施しています。

たとえば新宿区では、子育てファミリーに対して家賃を月額3万円、最長5年間補助する制度や、区外からの転入時には引っ越し料金や賃貸住宅の礼金・仲介手数料の一部を補助する制度があります。

こうした制度を利用することで、ある程度は家賃負担を抑えることができます。もっともこれらの制度は希望者も多いので、必ずしも全員が利用できるわけではありません。家賃の値上がりはある程度覚悟する必要があります。

(2)買い物が意外に不便

東京の都心部では地元商店街の力が強いせいか、郊外のような大型スーパーやショッピングセンターはほとんどありません。日用品の買い物に使えるのは、品揃えの悪い小規模スーパーか高級食料品店、地元商店街ぐらいです。結局、まとまった買い物をしようと思えば、電車で繁華街まで出るか、車で郊外の大型ショッピングセンターまで行くことになります。

(3)仕事と私生活のメリハリがなくなる

これは個人差はありますが、会社の近くに住んでいると「すぐ家に帰れる」という意識が強く、あとちょっと、あとちょっとと仕事を続けてしまいがちになります。特に徒歩圏内や自転車通勤など、終電がない場合は際限なく仕事できてしまうので、注意が必要です。

また、近場に住んでいるということで会社から残業勤務や休日の出勤を頼まれたりすることも(確かに他の社員よりは出勤しやすいかもしれませんが…)。こうしたことが続いて、改めて会社から離れたところに引っ越すケースもちらほら見られますので、仕事と私生活の間に一定の線引きをするようにした方が良い結果につながるでしょう。

有名企業も職住近接を後押し

上記(3)にも関連しますが、職住近接は会社側にも社員のモチベーション向上や、勤務時間の柔軟性などといったメリットがありますので、住宅手当などの福利厚生制度を設けている企業が数多くあります。

この住宅手当の歴史を振り返ると、定年退職まで1つの会社で働くのが当たり前だった時代には、労働力確保の一環として地方から人材を集めてくる必要があったため、各社が社宅や独身寮をこぞって建設・借り上げしました。

しかし、時代とともに会社とプライベートは分けたいと考える社員が増え始め、近年では転勤者の利用が中心になるなど、住居を必要とする一部の社員に提供する形が中心になってきています。

会社から一定圏内に住むと3~5万円が支給されるというケースが多く見られますので、会社近くへの引っ越しを検討する際は、こうした会社への転職なども併せて考えてみるのもいいかもしれません。

VOYAGE GROUP

VOYAGE GROUPでは、多くのクルーに気持ちよく会社に向かってもらうため、少しでも通勤時間を縮小し、通勤によるストレスを減らせればと考えています。そこで、会社からの2km圏内に賃貸した場合に、5万円の補助を支給することにしました。またクルー同士でルームシェアをする場合は、3人以上のクルーが居れば1人につき5万円の補助を支給するようにしています。これにより、クルーは渋谷、恵比寿、中目黒といった立地でありながら、負荷少なく住むことが可能となります。実際に、約半数近くのクルーがこの制度を利用しています。

https://voyagegroup.com/culture/environment/housing-allowance/

株式会社リブセンス

住宅手当

会社に徒歩で通勤できる範囲(オフィスより2.5kmの範囲内)に住むことで、「住宅手当」として月3万円が支給されます。満員電車のストレスやムダな通勤時間を減らし、事業や個人の成長にコミットすることが可能です。

https://recruit.livesense.co.jp/culture/

株式会社ドワンゴ

近距離手当

歌舞伎座タワー(中央区銀座)を起点として、半径5km圏内に居住する場合は月額30,000円を支給します。

※近距離手当支給者には通勤交通費手当は支給いたしません。

https://dwango.co.jp/recruit/system/

サイバーエージェント

家賃補助制度 2駅ルール・どこでもルール

勤務しているオフィスの最寄駅から各線2駅圏内に住んでいる正社員に対し月3万円、勤続年数が丸5年を経過した正社員に対してはどこに住んでいても月5万円の家賃補助を支給します。

https://www.cyberagent.co.jp/way/info/contents_type=1119

ピクシブ株式会社

代々木ファイブ(住宅手当)

会社から1.2km圏内に住めば5万円の補助金を支給(社員の約8割近くが利用)。配偶者と住む場合は配偶者付加金5万円を追加支給。

https://www.pixiv.co.jp/environment/

通勤地獄を緩和させる試みの効果も

一方で、郊外からの長距離通勤も、「通勤地獄」と呼ばれた、1970年代や80年代と比べると、緩和されてきています。 国土交通省発表の通勤通学時間帯の鉄道の混雑率は、当時は200%を超えていました。平成28年に行われた交通政策審議会で、「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」が話し合われ、ピーク時の個別路線の混雑率180%以下を目指すとされるなど、試みが進んでいます。

かつてはJR山手線には、通勤ラッシュ時になるとすべての座席が収納されて使用できなくなる家畜輸送車のような車両も使われていましたが、混在率の緩和に伴い、現在では廃止されています。

私鉄各社の全席や車両限定の座席指定のサービス

こうした混雑の緩和は、新路線の開通などで輸送力が強化されたり、時差出勤が次第に浸透してきたことに加え、都心と郊外を結ぶ鉄道の沿線人口も、ごく一部を除いてピークを過ぎ、むしろ減りつつあることによるものです。こうした状況を見据えて、一部の私鉄では近年、全席座席指定の通勤電車を走らせたりもしています。

職場に近くなくても、こういったサービスが利用しやすい駅に引っ越すことで、通勤の苦痛を緩和させるという方法も選択肢のひとつです。

●小田急電鉄( ホームウェイ/メトロホームウェイ )
18時以降の帰宅時間帯に運行する座席指定の特急とマンスカー。新宿発の「ホームウェイ」と、千代田線直通を利用した大手町や霞が関からの通勤が可能となる「メトロフォームウェイ」があります。
●京急電鉄(モーニング・ウィング/ウィング)
朝の通勤時間に三浦海岸、横須賀中央、金沢文庫、上大岡駅から、品川・泉岳寺までノンストップで運行する「モーニング・ウィング」と、帰宅時間の夕方・夜に品川から上大岡までノンストップで、それより先は快速特急停車駅に停まる「ウィング」があります。
● 京阪電気鉄道 (プレミアムカー)
大阪-京都間を結ぶ座席指定の特別車両「プレミアムカー」あり。通常料金に加えて400円・500円プラスで乗車可能。
● 西武鉄道 (拝島ライナー/ S-TRAIN )
西武新宿から拝島間の「拝島ライナー」と、所沢-豊洲間で、有楽町線との直通で利用できる「S-TRAIN」 が運行。どちらも全席指定。
● 東急電鉄 (Qシート/ S-TRAIN)
「Qシート」 は、東急大井町線で、平日の夜に大井町発・長津田行きの3号車が、座席指定の有料車両になるもの。「S-TRAIN」は、元町中華街と、西武秩父を結ぶ全席指定の直通列車です。

都心部の通勤時間帯の混雑具合

国土交通省が2018年7月発表した集計によると、東京圏の鉄道主要区間のラッシュ時における平均混雑率は、1975年には221%だったのが、その後急激に低下して2003年には171%となり、以後も徐々に低下を続け、2017年には163%にまで緩和されています。

混雑率とは、100%が定員乗車の状態。150%だと新聞を広げて楽に読める状態。180%は折り畳むなど無理をすれば新聞を読める状態。200%だと体が触れ合い、相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める程度。250%になると、電車が揺れるたびに体が斜めになっても身動きができず、手も動かせない状態とされています。

ちなみに2017年の名古屋圏の平均混雑率は131%、大阪圏では125%となっています。

こうした混雑率緩和の最大の要因となったのが、輸送力の増強です。輸送力は1975年を100とすると、2003年には164にまで上昇、その後ほぼ横ばいを続け、2017年は166となっています。

●主要区間の平均混雑率

東京圏163%
大 阪 圏 125%
名古屋圏131%

混雑率180%を超える路線もまだ多数

とはいえ、ラッシュ時の乗客数に輸送力増強が追いついていない路線もまだあります。東京圏の混雑率ワースト3は、東京メトロ東西線(199%)、JR総武緩行線(197%)、JR横須賀線(196%)の順。調査対象となった31路線のうち、目標混雑率とされる180%を上回っているのは11路線です。

結局、郊外に住む場合は、どの鉄道の沿線に住むかが、通勤ストレスを軽減する上で重要になってきます。

●目標混雑率180%を超えている路線

東京地下鉄東西線199%
JR東日本総武緩行線197%
JR東日本横須賀線196%
JR東日本南武線189%
JR東日本東海道線187%
東京都日暮里舎人ライナー187%
JR東日本京浜東北線186%
JR東日本埼京線185%
東急田園都市線185%
JR東日本中央快速線184%
JR東日本総武快速線181%

このうち、特に混雑している主要区間が以下の通りです。

東西線 木場 → 門前仲町 7:50~8:50 199%
総武線 錦糸町 → 両国 7:34~8:34 197%
横須賀線 武蔵小杉 → 西大井 7:26~8:26 196%
田園都市線 池尻大橋 → 渋谷 7:50~8:50 185%
中央線(快速)中野 → 新宿 7:55~8:55 184%

出典:東京圏における主要区間の混雑率(国土交通省/2017年)

上記は3年前の数字ですので、今はまた状況が変わっているかもしれません(本記事執筆中には、コロナウイルスの発生による時差通勤奨励なども)が、通勤圏の人口分布自体は大きく変わっていないので、上記路線・時間帯が混雑していると考えておいた方がよさそうです。

引っ越してみる? 「職住近接」ならタワーマンションも選択肢に

東京圏では近年、職住近接の「都心回帰」傾向が進んでおり、都心部の家賃相場は高止まりしています。逆に、郊外のベッドタウンの中には人気がなくなり、割安感が出ているところもあります。

これらの点も踏まえて、勤務先に近く利便性も高い都心に住むのか、間取りの広い家に住める郊外を選択するのか、慎重に検討するようにしましょう。住宅費の適正額は月収の3分の1程度とよく言われます。家賃と収入とのバランスを考えて、生活費を圧迫しないようにすることも大事です。

一方でお金よりも利便性を!ということで「職住近接」を追求するなら、最近また増えてきた都内のタワーマンションも選択肢となります。建築制限の緩い駅前の中心市街地に建っているところが多く、通勤や買い物に便利な上、セキュリティーもしっかりしています(もちろん家賃も高いですが…)。

まずは、現在自分にとって通勤がどれくらいの負担になっているのか、その解消をする方法として、どんな方法があるのか考えてみましょう。調査のうえ、「職住隣接が良さそう」だと判明したら、思い切って引っ越しを検討しててみてもいいかもしれませんね。

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著者投稿者 引越しラクっとNAVI編集部
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