【NAVIpedia】元引越会社員による引越し雑学百科事典 -#2 「か」-
こんにちは。引越しラクっとNAVIの今村です。
前回に引き続き、引越しに関する(専門)用語を、元引越会社員の私の「勝手な解釈」でお届けする『NAVIpedia ―引越し百科事典―』シリーズ、今回は『か』行をご紹介します。
と言いつつ、早速きましたネタ不足。どうしよう。
こうなったらアレしかありません。「グーグルせんせ~い!!!!」
・・・出てきた出てきた、【 引越し か 】で検索すると候補がズラリ。すごい!たくさんある!ネタが!!・・・これは、「か」だけで結構なボリュームになりそうです。
それでは、前回同様「私の独断と偏見」でバッサバッサとご説明させていただきます。お付き合いくださいませ。
目次 – か の雑学-
確定案件・幹事会社・閑散期
※各項目の内容は、私の主観・独断・偏見が大いに含まれます。
すべての引越会社に共通する見解ではありません。
あんまり鵜呑みにされませんように。
か-確定案件
・確定案件(かくていあんけん)
法人引越しで見られる「1社(専属)契約」の企業から依頼された引越しのこと。
今や、複数の引越会社の見積を比較する相見積り※が主流の中、転勤などの「法人引越し」の分野では企業と特定の引越会社が「うちはあなたのとこでしか引越ししないよ。だから安くしてね。」的な契約を交わしているケースもまだ多い。
本来は引越会社としても「絶対に契約になるおいしい案件」として、ボリュームディスカウント等の商談に話は進んでいくのだが、ここ数年はその確定案件から手を引く引越会社が増えてきている。「手を引かれてしまう」、その対象となっているのがこういう企業だ。
・引越し依頼の発生する時期が、繁忙期(3月下旬~4月上旬)のみの企業
今年はニュースでも話題になった『引越し難民』問題。
茨城県庁の引越しまで断られている状況の中において、「おいしい」案件として引越会社にとっての優先度は高いはずの確定案件も、その依頼が繁忙期だけに集中するのであれば、正直おいしくない。
ここ数年、大手引越会社を中心にそのような企業への「契約解除」申し出の動きが出ている。
完全に「売り手市場」に近づいた、今年の春の引越し。
大手引越会社から見た、繁忙期(3~4月)の『顧客優先順位』は
1位:法人引越し(1社確定)
※通年依頼の企業>契約解除されなかった「繁忙期のみ企業」
2位:法人引越し(相見積り)
※通年依頼の企業>契約解除されなかった「繁忙期のみ企業」
3位:個人引越し(直接問い合わせ)
※自社Webサイト、電話問い合わせ等
4位:個人引越し(提携業者からの紹介)
※不動産会社・福利厚生サービス等
対応不可:法人引越し※契約解除された「繁忙期のみ企業」
受付中止:個人引越し(相見積り)※一括見積りサイト等
という感じではないだろうか。
年間を通して引越しの発生する企業ならば、これまで通り「おいしい案件をくれるお客様」として対応してもらえると思うが、3~4月の繁忙期にしか異動・転勤が発生しない企業は来年以降も苦しい状況が続くだろう。
※相見積り・・・前回の【NAVI pedia #1 あ行】参照。
か-幹事会社
・幹事会社(かんじがいしゃ)
新築の大型マンションの入居開始時期に集中する入居者の引越し(『一斉入居※』と呼ばれる)の、ルールの制定・周知・スケジュール調整などを窓口として一手に引き受ける引越会社のこと。
※この「一斉入居」という特殊な引越しについては、この記事を参照していただきたい。
合わせて読みたい!
この幹事会社、文字通り「(めんどくさい)幹事をやってくれる引越会社」なのだが、デベロッパーや販売代理の不動産会社からの依頼で、大手引越会社や地域に根ざした老舗の引越会社が担うことが多い。「幹事を任される引越会社 = 一斉入居で起こりうる様々なトラブルに対処できるHP(体力・組織体制)とMP(実績・経験値に基づくテクニック)を備えた引越会社」と言えよう。
そんな名誉ある幹事会社だが、この「幹事会社」というフレーズ自体はあまり世間には浸透していないようで、一斉入居の見積もり依頼の際、『今回のお引越しの幹事会社様はどちらですか?』と聞いても、たいていのお客様からはマンションの管理会社名の回答が返ってくる。まずは幹事会社が何なのかという説明から始まるのだ。
新築マンション購入者のための『入居説明会』というものがある。(入居説明会については、こちらの『アルファジャーナル』さんの記事が非常に詳しく分かりやすい。)
幹事会社はその説明会に同席し、引越しに関するルール説明や入居者の引越希望日・世帯人数などの事前情報の確認を行う(アンケート後日回収形式も多い)。この『希望の確認』というのがなかなかやっかいで、連絡の取れない入居者、なかなか希望日を決められない入居者、「絶対にこの日以外は譲らない!」と言い張る頑固な入居者・・・など、大型マンションになれば100世帯以上の入居者の対応をすることになる。
この顧客対応に加えて、不動産会社への進捗状況の定期報告も幹事会社の仕事だ。その他、物件によっては幹事会社が事前に建物の養生(エントランス~エレベーター~廊下などありとあらゆる箇所の壁や床の保護)作業を請け負うケースも多い。この作業だけでもかなりの人員・時間を要する。大手引越会社では一斉入居の対応をする専門チーム( 営業(対:不動産会社)+営業(対:入居者)+カスタマーセンタースタッフ +現場作業スタッフ )を組んで対応することが多い。
しかし残念なことに、ここまでやっても幹事会社は引越しの指定業者ではない(不動産会社との関係性によっては「指定」の称号をもらえることもあるが「推奨の引越会社」レベルが一番多いと思う)。そのため、頑張って何度も対応した入居者が、あっさり他の引越会社を使って引越しをするケースも多々ある。
幹事会社にとっての一斉入居は報われないことも多いが、それでもある程度のボリュームの成約件数・売上げが見込める「大きな仕事」と言える。
ここからは幹事会社ではない引越会社目線。
他社が幹事をしている一斉入居の引越は正直、あんまりやりたくないというのが本音だろう。
顧客との打ち合わせに加え、幹事会社との事前確認・打ち合わせが発生するからだ。入居者自身が説明会で幹事会社より指示された『引越しに関するルール』を把握していないことが多く、見積り提示→成約後の条件変更による再見積りの二度手間が発生することも多い。(制限時間内でないとエレベーターが使用できなかったため作業人数を増やす、トラックのサイズに何トンまでと指定があったため小さいトラックへ変更し台数を増やす、駐車可能エリアが遠く台車作業を追加する・・・など。)
結果、最初の見積りでは入居者に聞いた条件のみの見積金額で成約が取れたが、後で幹事会社に確認して発覚した追加条件による料金変更で『だったら、幹事会社の方が安いからキャンセルします』と言われてしまうこともあるのだ。
今はそう多くないのかもしれないが、幹事会社ごとによるルールの違いも多少あり『幹事が○○だったらやっても良いけど、××だったらやりたくない』というような声も聞いたことがある。
幹事会社が定める一斉入居のルールとして、
・先着順タイプ(トラック到着した引越会社より順次搬入) ※1日あたりの件数制限あり
・時間割タイプ(制限時間の間のみ搬入作業が行える)
の2つのパターンがあるが、どちらにもメリット・デメリットがある。
先着順だと、先に着いたトラックの作業が終わるまでの大きな待機時間が発生する。時間制限だと、制限時間内に終わらなかった場合も強制的に終了させられるため、残りの荷物の搬入が他の入居者の作業がすべて終わった後や後日の作業になってしまう。
さらにやっかいなことに、この新築の大型マンションの完成時期は「春の繁忙シーズン」と重なることが多い。不動産会社も引越しニーズの高まる時期に完成時期を合わせがちなのだ。今年はあまり聞かなかったが、一時期の江東区や港区、川崎エリアの大型タワーマンション建設ラッシュの時には『他社幹事の一斉入居はお断り』という、通達を出す引越会社が何社も出てくるくらいだった。
他社幹事の引越しを引き受ける引越会社のメリットとしては、すでに幹事会社のほうで物件の養生作業などはしっかりやってくれていることが多いので、そういった付帯作業はやらなくても良い、相見積りで幹事会社と戦う時は比較的高単価で引越しの成約が取れる・・・くらいだろうか。
入居者は、幹事会社を利用するメリット(アフターフォローも含めた安心感・十分な人員体勢が整っているため作業がスムーズ・日程の希望が通りやすい)・デメリット(比較的、金額が高い傾向がある)を考慮したうえで利用してほしい。
か-閑散期
・閑散期(かんさんき)
3~4月など依頼件数が集中する「繁忙期」の逆。つまり、『暇な時期』。
このグラフは、以前の記事( 『引越し初心者カワセと学ぼう!』引越料金の決まり方編。)からの引用だが、このグラフの落ち込んでいる★部分がいわゆる「閑散期」にあたる。
このグラフは「料金」目安のグラフになるが、そのままイコール「引越しの依頼件数」と考えて良い。
多少、引越会社によって違いはあるが、3~4月のピーク★を頂点としてゴールデンウィークを過ぎたあたりから依頼件数はどんどん減っていく。夏休みに少し盛り返すが、お盆の時期などはまた減る傾向だ。
つまり、依頼件数が多い(忙しい)=高くなる、少ない(ヒマ)=安くなる という感じでダイレクトに金額に影響するのが引越料金だ。
引越会社勤務時代、お客様に「提供しているサービスもトラックも人員も同じなのに、なんでこんなに料金が変わるの? おかしいでしょ!」と言われたことがあるが、そういう時には航空会社の飛行機のチケットや、宿泊施設の宿泊料金の例を出して説明する。
かかるコストが変わらない以上、依頼件数が大きく上下する業界ではこの「閑散期」をどう乗り越えるかが会社を運営していく上での勝負となる。20台のトラックがあっても5台しか稼動しない、20名のドライバー(社員)を抱えていても現場に出るのは5人だけ・・・そういう状況が発生するのが閑散期だ。駐車場に停めたままのトラック、技術があるのに活かせないスタッフ。維持するための固定費を少しでも軽くするために、遊ばせているくらいであれば原価ギリギリ・利益度外視でもいいじゃないか!とにかく引越しさせてくれ!!という切羽詰った状態になり、閑散期には驚くくらいの低価格で引越しができるラッキーなお客様が続出する。
引越業界は、「繁忙期に値上げしすぎ!」というよりも、「閑散期に安くしすぎ!」なのだ。
ちょっと話は変わるが、この繁忙期/閑散期の依頼件数の差の大きさこそが、今問題となっている『引越し難民』の原因のひとつだと思っている。特に中小の引越会社は、閑散期に余計なコストをかけないために正社員の雇用人数は少なく、繁忙期は契約社員やアルバイトを増員して対応する傾向がある。そのため、「人材の確保」「人の定着率」の問題が常につきまとっている。ここ10年くらいは『募集をかけてもなかなか人が集まらない・・・』という引越会社の嘆きの声を聞いている。
以上、「か」の引越し雑学でした。
ネタがない!と騒いだ割に、やはり結構なボリュームになり自分でも驚きました。
今回は「か」のみで筆を置きたいと思います。
次回でか行を終わらせることはできるのでしょうか。
私にも分かりません。
それでは、また。